sonar HRテクノロジーが発信する、
採用と人事の情報メディア

その他ノウハウ

- Others -
その他ノウハウ

同族経営のメリット・デメリットとは?成功させるためのポイントとともにご紹介

日本の企業の多くが該当する同族経営には、安定した経営を持続しやすいという一面があります。そのため、「同族経営について理解を深めたい」と考える経営者の方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、同族経営の概要やメリット・デメリット、成功させるポイントについてご紹介します。「安定した経営を持続させたい」という経営者の方は、ぜひご覧ください。

ビジネス形態の一種!同族経営とは

同族経営とは、特定の親族が会社を所有・経営するビジネス形態のことです。「同族会社(同族企業)」「家族経営」「ファミリービジネス」などと呼ばれることもあります。

同族経営の場合、創業者の一族が企業の株式の多くを所有しているのが一般的です。具体的には、法人税法によって以下のように定められています。

会社(投資法人を含む。以下この号において同じ。)の株主等(その会社が自己の株式(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十四項(定義)に規定する投資口を含む。以下同じ。)又は出資を有する場合のその会社を除く。)の三人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。

引用:昭和四十年法律第三十四号 法人税法|e-GOV 法令検索

つまり、企業が発行した株式や出資金の50%以上を「3人以下の株主」や「株主と特殊な関係にある個人および法人」が保有している場合に、​「​同族会社​」​と判断されます。

日本は同族経営の企業が多い

同族経営に対して「家族で経営している小さな企業」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。しかし、実際にはそのようなことはなく、たとえばトヨタ自動車株式会社やサントリーホールディングス株式会社、パナソニック株式会社などの大手企業も同族経営に該当します。

また、国税庁が発表した「令和2年度分 会社標本調査」を見ると、日本企業の96.3%が同族経営であることがわかります。この点から、日本は同族経営の企業が多い国であるといえます。

参照:令和2年度分 会社標本調|国税庁

確認しておこう!同族経営のメリット・デメリット

では、同族経営にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

​同​​族経営の​メリット

メリットには、主に以下の3つが挙げられます。

経営理念が浸透しやすい

同族経営の特徴は「親族で会社を経営すること」です。まったくの他人よりも家族や親族同士のほうが互いの考え方を理解できる傾向があるため、経営理念が浸透しやすくなります。

経営理念が浸透すれば一貫性のあるブレない経営を実現できるため、顧客や取引先から「芯が通っている」と好印象を抱いてもらいやすくなり、それが結果として企業のイメージアップにつながる可能性があります。

迅速に意思決定ができる

経営者と株主が分離している非同族経営の場合、株主総会での特別決議において株主から拒否権を行使されることがあります。また、株主の意思を汲みながら事業を進めなければならないケースもあり、何らかの意思決定をしたくてもすぐに決断できないこともあります。

一方で同族経営の場合は、経営者が株主総会で支配権を握っていることも珍しくありません。そのため、経営者が迅速に意思決定を下すことが可能です。

事業を継続しやすい

同族経営の場合、経営権と一緒に企業理念やビジョン、事業の展望も後継者に引き継がれます。そのため、立ち上げた事業を初代で完結させられなかったとしても、二代目・三代目へと引き継ぎやすくなっています。また、経営権を引き継いだ後継者は「代々受け継いできた会社を守りたい」という想いを持つことが多いため、事業と真剣に向き合う傾向があります。

これらの点から、同族経営の場合は「企業としての長期的な繁栄」を目指して、大胆な経営戦略を実行しやすいといえます。

​ ​​同​​族経営の​デメリット

デメリットには、主に以下の2つが挙げられます。

1.親族同士で争う可能性がある

経営について親族間で意見が分かれた場合、争いが起こる可能性があります。場合によっては、個人の争いから派閥争いにまで発展することもあり、​​ ​​​ほか​​の社員を巻き込んでしまう恐れがあります。​​ ​

泥沼化した親族間の争いは、企業の経営を大きく揺るがす危険性が高い​ ​​ため、​最悪の場合、倒産につながりかね​ ​​ません。​もし​、​意見の齟齬​など​が起きた​ ​​場合には、​お互いに納得できる答えが出るまで話し合うなどして、歩み寄るようにしましょう。

2.社員間に差別が生まれる可能性がある

同族経営の場合、仮に親族が資金を私的に流用・横領しても「身内だから」と贔屓(ひいき)して問題視しないことがあります。また、経営者の親族である社員のほうが高い評価や報酬を得られるという差別が起き​ ​​るケースや​、親族以外の社員からの意見を一切聞かな​ ​​いといった​ケースもあります。

このように、社員間に格差が生まれやすい状態になると社内で不満が高まり、最悪の場合には大量離職や業績悪化につながる恐れがあるため、同族経営でも全社員を平等に扱うことが大切です。

公私混同を避けよう!同族経営を成功させるポイント

では、同族経営を成功させるにはどのようなポイントを押さえればよいのでしょうか。

法令を遵守する

同族経営の場合、企業によっては経営者の身勝手な行いを許してしまうことがあります。そのため、万が一経営者が倫理に反するような行動をしても気​ ​​が付かず​、見て見ぬ振りを​ ​するケースも珍しくありません。このように企業のガバナンス(統治)が欠如すると、コンプライアンス違反や不祥事につながる恐れがあり、自社のイメージが下がってしまう可能性があります。

同族経営​ ​​では​第三者によるチェックがないため、非同族経営に比べて経営者が自分に甘くなる傾向があります。そのため、同族経営の経営者は自らを厳しく律し、法令を遵守することが大切です。

親族以外の社員にも目を向ける

同族経営を成功させるには、親族以外の社員にも目を向けることが大切です。仮に、親族を贔屓(ひいき)するような経営方針だと、親族以外の社員の士気やモラルが低下する可能性があります。これでは、全社員で足並みを揃えて事業を成功させることが困難です。

そのため、同族経営に取り組む際は社員一人ひとりを思いやると同時に、それぞれが知識やスキルを発揮できる環境を整備することが大切です。そうすることで、理念や目標に沿って事業を順調に展開しやすくなるでしょう。

成功体験に捉われすぎない

「先代が現役のときにこの方法で成功したから」と、これまでの手法や成功体験にとらわれすぎていると、経営に関する新たなアイデアが出なくなる可能性があります。そのため、ジャンルを問わずさまざまなことにアンテナを張ると同時に、チャレンジ意欲を持つことが大切です。

このとき、たとえばアプリやシステムなどの最新テクノロジーを積極的に導入すれば、業務を効率化しやすくなるため、新しいことに挑戦しやすくなります。

このほか、新たな企画や進行中の事業に関するアイデアなどを社員から提案されたら、前向きに検討することも大切です。自分ひとりでは思いつかない斬新なアイデアを取り入れることで、新たな成功体験を生み出しやすくなります。

正当な評価制度を設ける

経営者の独断と偏見によって社員の評価や報酬を決めてしまうと、社員が不満を持ち離職してしまう可能性があります。人材不足になると安定した経営を実現できなくなるため、同族経営に取り組む際も透明性が高く正当な評価制度を設けることが大切です。

​​たとえば、MBO(目標管理制度)を導入する​ ​​のもよいでしょう​。MBOとは、社員自身に個人目標を定めてもらい、その進捗や達成度によって人事評価を下すマネジメント方法です。​ ​​MBOであれば​不当​ ​​に​評価が下ることはないため、社員に納得してもらいやすい評価制度を確立することができます。​​​

このように自らの頑張りが正当に評価される仕組みを取り入れれば、社員の仕事に対するモチベーションの向上を図ることができ、安定的な同族経営を実現しやすくなります。

まとめ

同族経営には、「経営理念が浸透しやすい」「迅速に意思決定ができる」「事業を継続しやすい」というメリットがあります。ただし、その一方で「親族同士で争う可能性がある」「社員間に差別が生まれる可能性がある」というデメリットもあるので、理解した上で取り組むことが大切です。

同族経営を成功させるには、とくにデメリットやリスクをどうカバーするかが重要になるため、最低でも公私混同は避け、平等・正当な経営を目指すようにしましょう。

▼この記事を読んだ人は以下の記事も読んでいます

企業に必要な「幹部候補」とは?求められる知識・能力と育成方法を押さえよう
組織戦略を策定して理想の企業に!具体的な立て方と成功させるポイントを伝授
経営幹部に必要な知識・スキルとは?効率的に育成するポイントを押さえよう

この記事をシェアする

この記事の著者

寛之大内