退職者・退職予定者にもボーナス(賞与)は支給すべき?基本の考え方と減額方法について

ボーナスは、退職者・退職予定者に対しても支給する必要があるのでしょうか。また、ボーナスを減額したり返済してもらったりすることはできるのでしょうか。
今回は、退職者・退職予定者に対するボーナス支給の考え方や減額方法、返済の可否について解説します。あわせて、退職者へのボーナス支給に関するQ&Aもご紹介しているので、ぜひご覧ください。
就業規則で判断!退職者へのボーナス支給について
退職者にボーナスを支給するか否かは、企業の就業規則によって異なります。
第一に、就業規則に「ボーナス支給の規定」がない場合は、言わずもがな支給する必要はありません。その一方で就業規則に「ボーナス支給の規定」があり、かつ支給日在籍要件を定めている場合は、退職日によってボーナスを支給するかどうかが変わってきます。
支給日在籍要件とは、賞与支給日に会社に在籍している社員を賞与の支払対象とする定めのことです。そのため、たとえば賞与支給日にすでに退職している社員には、ボーナスを支給する必要はありません。反対に、賞与支給日にまだ在籍している社員にはボーナスを支給します。
ただし、支給日在籍要件は前もって就業規則・賃金規程・賞与規程に定め、社員に対して周知する必要があるので、この点は忘れないようにしましょう。
また、支給日在籍要件を定めていない場合に新たに追加することは、社員にとっての不利益変更にあたります。就業規則を社員に不利益になるよう変更することは、裁判例で制限されています。全社員の同意を得る、または変更に合理性がなければならないため、この点にも注意しましょう。
退職“予定”の社員に対するボーナスは?減額できる?

では、退職“予定”の社員に対するボーナスはどうなるのでしょうか。支給すべきか否か、また減額の可否について、以下で詳しく解説します。
退職“予定”の社員にはボーナスを支給する必要がある
上述のとおり、就業規則に「ボーナス支給の規定」があり、かつ支給日在籍要件を定めている場合は、賞与支給日に在籍している社員に対してボーナスを支給する必要があります。退職“予定”の社員の場合、賞与支給日にはまだ在籍していることになるので、支給日在籍要件を満たすと判断することが可能です。つまり、退職“予定”の社員にはボーナスを支払わなければなりません。
就業規則の内容次第ではボーナスを減額できる
日本国憲法 第22条第1項により、労働者には「職業選択の自由」が認められています。そのため、退職希望日の2週間前に解約の申入れを行えば自由に退職することが可能です。
この場合、社員は賞与支給日まで退職の意思を隠し、支給直後に解約の申入れを行うこともできます。そうなると、企業にボーナス支給の負担が重くのしかかってしまいます。
そこで押さえておきたいのが、就業規則や賃金規程、賞与規程の内容次第では、退職“予定”の社員のボーナスを減額できるケースがあるということです。具体的には、就業規則・賃金規程・賞与規程などに明記し、それを社員に対して周知する必要があります。
さらに、社員が減額に納得できるよう、適切な理由を説明することも欠かせません。そもそも、ボーナスには「労働への対価」と「今後の活躍(期待)に対する支払」の2つの意味があります。後者に関しては、退職“予定”の社員には該当しないため、ある程度の減額は正当だと説明できるでしょう。
参照:憲法22条に規定する職業選択の自由について|厚生労働省
退職の申出は2週間前までに|厚生労働省
気になる疑問!ボーナスを返済してもらうことは可能?
退職者や退職予定の社員に対して、ボーナスを100%支給することに納得できない企業の場合、「支給後に返済してもらえばよい」と考えることもあるかもしれません。しかし、実際にはそのようなことはできず、一度支給したボーナスの返済を要求する行為は禁止されています。
また、社員の退職自由を妨害する行為と判断される可能性があることから、「ボーナスを支給してから◯か月以内に退職した場合、ボーナスを返済する」といった就業規則を設定するのも禁止です。
この点から、満額のボーナス支給を避けたいのであれば、上述した減額を図るのが有効といえます。「ボーナスを支給してから◯か月以内に退職した場合、ボーナスの◯割を減額する」といった就業規則はとくに問題ないので、あらかじめ就業規則・賃金規程・賞与規程などに明記し社員に周知しておきましょう。ただし、大幅な減額は認められないので、その点は忘れないよう注意してください。
参照:ボーナスは退職した社員にも支払わなければいけない?会社で定める「就業規則」次第では支払い義務が発生することもある|たきざわ法律事務所
最後に要確認!退職者へのボーナス支給に関するQ&A

最後に、退職者へのボーナス支給に関するQ&Aをご紹介します。ここで疑問を解消させましょう。
参照:ボーナスは退職した社員にも支払わなければいけない?会社で定める「就業規則」次第では支払い義務が発生することもある|たきざわ法律事務所
Q.必ず支給日在籍要件に準ずる必要がある?
退職者や退職予定の社員に対するボーナス支給の考え方には、支給日在籍要件が深く関与しています。しかし、だからといって支給日在籍要件が絶対とは限りません。
実際には企業それぞれの就業規則に準ずる必要があり、たとえばボーナス支給日が7月25日、そして就業規則に「ボーナスは6月末の時点でまだ在籍している社員に支給」と記載があるとします。この場合、賞与支給日にはすでに退職していたとしても、6月末時点に在籍していた退職者にはボーナスを支払わなければなりません。
このように、就業規則の内容次第では支給日在籍要件以外の基準で対応する必要がありますので、注意してください。
Q.有給休暇消化時は「在籍中」?それとも「退職済み」?
退職に伴う有給休暇消化時は、まだ企業に「在籍中」と判断されます。つまり、有給休暇消化中に賞与支給日が重なれば支給日在籍要件を満たすことになるため、ボーナスを支給する必要があります。
Q.企業都合による退職でもボーナスは支給すべき?
企業による都合や定年退職など、社員自ら退職日を決められないときはボーナスの支給が必須です。また、形式上は自主退職だとしても、企業からの強い要望で退職しなければならないケースも同様といえます。ボーナスを支給しなくてもよいケースは、自主退職であり、かつ規則や要件を満たしていない場合に限るので、間違えないよう注意しましょう。
Q.業績不振でもボーナスを支給しなければならない?
就業規則に「業績によってはボーナス不支給となることがある」と記載している場合は、業績不振の際に無理してまでボーナスを支給する必要はありません。これは退職者か否かを問わないため、現社員・退職者(退職予定者)どちらにも支給しないことになります。
Q.ボーナスを支給しなかったら労働基準法違反になる?
仮に、就業規則に「ボーナス支給の規定」があり、かつ支給日在籍要件を設けていたとします。この状況で支給日に在籍している社員にボーナスを支払わなかった場合、それは賃金不払い(労働基準法違反)に該当します。最大で6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科されます。
また、労働監督署の調査や指導が行われることもあり、その場合は企業のイメージダウンにつながる恐れも。そのため、ボーナス支給の規則・要件が整っている場合は、ボーナスの不支給に注意が必要です。
まとめ
退職者・退職予定者にボーナスを支給するか否かは、それぞれの企業で自由に決められます。そのため、就業規則の内容次第ではボーナスを支給しなくても何ら問題はありません。
ただし、就業規則にボーナス支給の規定と支給日在籍要件を定めていたり、「ボーナスは6月末の時点でまだ在籍している社員に支給」などと具体的な支給要件を明記していたりする場合は、退職者・退職予定者にボーナスを支給する必要があるので注意しましょう。
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