経営幹部に必要なスキルとは?育成と成長のポイントを解説

企業が今以上に進化し、さらなる発展を遂げるには、経営者をサポートする存在として経営幹部の存在が不可欠です。しかし、中には「経営幹部の役割は何なのか」「どのような能力を備えた人材が適しているのか」などの疑問から、幹部人材の登用に踏み切れずにいる企業もあるでしょう。
そこで今回は、経営幹部の役割・管理職との違いとともに、経営幹部に必要な6つの知識・スキルについてご紹介します。あわせて、経営幹部の育成が進まない理由と対処法、経営幹部を育成する際のポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
成果を出すための策を考える!経営幹部とは
経営幹部とは、企業の業務執行権を持っている、取締役や執行役のことです。誰でも就任できるわけではなく、企業の成長・発展に貢献できるような“優秀な人材”が務めるのが一般的です。
経営幹部の主な役割は、企業の事業を包括的に捉えて、利益・成果を出すにはどうすればよいか考えることです。また、企業の将来に関わる決断を下すこと、そして経営者が最終的な判断を下す際にサポートすることも、経営幹部の役割といえます。
どれほど優秀な経営者でも、専門外の領域に対する意思決定を求められたり、判断する上で必要な情報が不足していたりすると、誤った決断をしてしまう可能性はゼロではありません。そのため、企業にはすべての事業を把握し適切な判断ができる経営幹部が必須といえます。
経営幹部と管理職は何が違う?
経営幹部と類似する言葉に「管理職」があります。同じ意味だと認識している方もいるかもしれませんが、実はこの2つの言葉が指す意味・役割は異なります。
経営幹部は上述のとおり、企業の業務執行権を持っている、取締役や執行役のことです。特定の部署や業務に限定せず、広い視野を持つことが求められます。
一方で管理職は、担当している部署の業務を最適化する人材のことです。ほかの部署と連携することもありますが、最終的な職責が担当部署の範疇を超えることはありません。そのため、管理職の場合はひとつの部署・業務と向き合う姿勢が求められます。
つまり、経営幹部と管理職では「担っている部署・業務の範囲」に相違があるといえます。
何が求められる?経営幹部に必要な6つの知識・スキル

では、経営幹部にはどのような知識・スキルが求められるのでしょうか。以下で、とくに必要とされる6つをご紹介します。
1.経営に関する知識
経営幹部には、社会や経営に関する幅広い知識が求められます。また、企業を包括的に捉えて戦略的な組織を設計するために、経営的な視点も持たなければなりません。なぜなら上述のとおり、経営幹部は経営者が最終的な判断を下す際にサポートをしなければならないからです。
経営に関する知識・経営的な視点を備えていない場合、経営幹部として自らの役割を果たせなくなります。これでは元も子もないので、財務に関する知識や情報セキュリティの知識など、会社経営にかかわる広い知識について日頃から学ぶ必要があるといえます。
経営に関する知識の深め方
財務に関する知識や情報セキュリティの知識に関しては、書籍や参考書で習得できます。移動中や仕事の合間、夜寝る前など空いた時間に学習できるため、忙しい方も知識を深めやすいでしょう。
経営戦略をはじめとする専門度の高い内容は、経営者または経営幹部経験がある人から直接学ぶのが効果的です。書籍や参考書には載っていないリアルな経験談から、「こういう場合はこう対処したほうがよい」といった具体的な学びを得られます。「自分だったらどうするだろう」と考えるきっかけにもなるので、自らの知識をより深められるでしょう。
2.未来を見据える力
経営幹部には、未来を見据える力(企業の未来について考える先見性)も求められます。この力があれば、競合他社よりも早く“利益・成果を出すための行動”を起こしやすくなり、ひいては企業の業績を高めることができます。また、何らかのトラブルや不調が起こったとき、そして慎重かつ適切な判断が必要なときに、余裕をもって意思決定することも可能です。
未来を見据える力の鍛え方
未来を見据える力を鍛えるには、日頃から「過去の事例から学ぶ」「未来を想像する」「どういう未来になるかを考える」の3つを意識することが大切です。
まず鍵となるのは、過去の事例から学ぶことです。「歴史は繰り返す」という言葉のとおり、過去に起きた出来事が再び起こる可能性はゼロではありません。そのため、「誰がどのような行動を起こし何を成し遂げたのか」という事例を知りその本質を理解することは、未来を見据える力を鍛える上で大いに役立つといえます。
そして、複数のパターンの未来を想像することも大切です。実現するかどうかは別として、あらゆる想像をしておけば先見性が養われ、いざというときに適切な意思決定ができるようになるでしょう。
過去から学び未来を想像したら、自社の現状を踏まえて未来がどうなるかを考えてみましょう。テーマを決めてその先行きを考える訓練をすることで、未来を考えることに慣れて、自然と未来を見据える力が鍛えられるでしょう。
3.問いを立てる能力
自社の商品やサービスが必ずしも売れるとは限りません。しかし、だからといって競合他者の商品・サービスを真似ると価格競争になり、安定して利益を得られない可能性があります。
長く生き残れる企業になるには、今までなかった新たな価値を顧客に提供する必要があり、そこで経営幹部に求められるのが、常識を疑ったり社会のニーズに疑問を抱いたりする「問いを立てる力」です。この能力が備わっていれば、新たな価値を見出しやすくなるでしょう。
問いを立てる能力の鍛え方
そもそも問いを立てるには、ひとつの物事をさまざまな角度で捉え、その核心を理解する必要があります。そのためには経営に関する知識だけでなく、歴史や化学など幅広い分野の知識が必要であり、それらが新たな気づきや問いをもたらします。
つまり、問いを立てる能力を鍛えるには、さまざまな分野について学ぶ、その分野に精通した人の話を聞くなどして、教養を深めることが必要不可欠といえます。
4.速やかに意思決定する能力
日頃から問題が発生しないよう気をつけていても、何らかの事故が起きたり、社員が不祥事を起こしたり、顧客からのクレームをもらったりすることもあるでしょう。経営幹部には、このような問題が発生したときに素早く対処し、意思決定を下して結果を出す能力も求められます。
経営幹部の判断によって、企業の未来が変わってしまう可能性はゼロではありません。そのため、上述した知識・能力をもとに適切な意思決定を速やかに行うことが重要です。
速やかに意思決定する能力の鍛え方
速やかに意思決定する能力は、トレーニングをすることで鍛えられます。
まず、問題の全体像を把握し決断を下すタイムリミットを設定します。次に「自社がいつ・どうなっていたら望ましいか」を考えて、それを実現する上で必要な施策や懸念点を洗い出し整理することで、課題の全体像を把握します。最後に、望ましい姿を実現するために必要な選択、その選択の不確実性を考えると同時に、「自社にとってその姿は本当に望ましいのか」という価値の判断尺度を明確にします。そして、選択肢ごとに相対的な喜びを価値の判断尺度に照らして測定し、最終的な決断を下します。
日ごろからこのトレーニングを行うことで、速やかに意思決定する能力が養われていくでしょう。
5.対人関係能力
部署やチームのまとめ役を担うことも多い経営幹部には、対人関係能力(ヒューマンスキル)も求められます。具体的には、コミュニケーション能力やヒアリング力、交渉力などが挙げられます。
対人関係能力が備わっていない場合、クライアント・顧客や競合他社との関係を維持できなくなる可能性があります。これでは企業を進化・発展させるのが困難となるため、対人関係能力は必ず身につけておくべきスキルといえます。
対人間係能力の鍛え方
対人間係能力を鍛えるには、想像力を働かせる(=相手の気持ちになって考える)ことを習慣化させる必要があります。たとえば、人間関係が悪化した場合は負の感情に支配される傾向がありますが、それを阻止し冷静になって相手の気持ちを考えるようにすることが大切です。そうすることで想像力を働かせる癖がつき、自ずと対人間能力が鍛えられていくでしょう。
6.リーダーとしてのマインド
企業の経営は、経営幹部の能力だけでなく、人格や価値観によっても左右されます。そのため、経営幹部は時として、自己の欲求を抑えて組織を優先させなければなりません。つまり、「自らが企業の成長を担っている」というリーダーとしてのマインドが求められるというわけです。
このマインドがあれば、社員からの信頼を得やすくなり、進化・発展に向けた施策を実行しやすくなります。
リーダーとしてのマインドセット
マインドセットとは、人の考え方や受け止め方、習慣、好みなどを意味する言葉です。ビジネスシーンでは基本的に「考え方の枠組み」を指します。
経営幹部が身につけるべき、リーダーとしてのマインドセットは「ABCD理論」「影響の輪」「感情コントロール」の3つです。
ABCD理論とは、物事の考え方や受け止め方の仕組みを現した論理療法です。具体的には、A(出来事)がC(結果)に直結しているのではなく、A(出来事)に対するB(考え方)があるからC(結果)があるという理論です。「出来事は変えられなくても考え方は変えられるし、それで結果が変わることもある」という真理は、経営幹部にとって欠かせないマインドセットでしょう。
影響の輪とは、自分自身の言動や感情、考え、他人への接し方など「自らに影響がありコントロールできる事柄」のことです。一方で「関心の輪」もあり、それは他人の言動や感情、考えのほか、天気や自然災害など「各々が関心を持っている事柄」を指します。
このうち、経営幹部は自分自身の影響の輪に意識を向けることが大切です。他人は変えられないことを理解し自分を変えていくことで、明るい未来が開けるようになります。
感情コントロールも、経営幹部がリーダーとして備えておきたいマインドセットです。
たとえば、一般的に部下を叱る際の「怒り」は第2感情で、第1感情は「期待」であることが多くなっています。しかし、このことに気づかず「怒り」の感情だけで叱る人も多く、その場合部下を深く傷つける可能性がある上に根本的な解決にはつながりません。そのため、リーダーとしては常に第1感情に目を向け、それを伝えていくことが大切です。
経営幹部の育成が進まない!主な2つの理由と対処法

「経営幹部を育成しようにもなかなか進まない」という企業も少なくありません。その理由としては、主に以下の2つが考えられます。
1.育成経験がない
一般的な社員研修と異なり、経営幹部の育成はインプット重視の座学だけでは不十分といわれています。なぜなら、経営幹部には「経営者の意思決定をサポートする」「経営戦略を立案する」などの役割があり、それらの実践も含めて育成する必要があるからです。
しかし、そういった育成経験がない場合は何をどうすればよいかわからないため、結果として経営幹部の育成が進まなくなってしまうのです。
もし心当たりがある場合は、外部研修を利用するとよいでしょう。経営幹部やその候補者に対して、求められる知識やスキルなどを指導してくれるため、効率よく経営幹部の育成を行えます。
2.育成方法が偏ってしまう
前述のとおり、経営幹部は企業の成長・発展に貢献できるような“優秀な人材”が務めるのが一般的です。経営幹部になるための教育を受けたわけではないので、たとえば今の経営幹部が次の経営幹部候補者を育成する場合、自らの成功経験に基づいて候補者を育てる傾向があります。つまり、人によって候補者の育成方法に偏りが出る可能性があるのです。
また、経営幹部自身と同じタイプの候補者ならスムーズに育成でき成長も見込めますが、異なるタイプの候補者の場合はうまく育成できず成長につなげられない恐れもあります。経営幹部の育成がなかなか進まない場合は、後者に該当している可能性が考えられます。
もし心当たりがある場合は、事前に育成の方向性や方法、教育内容などを明確にすることが大切です。そうすることで、どのような候補者でも経営幹部として育てやすくなるでしょう。
流れとあわせて押さえよう!経営幹部を育成する際のポイント

優秀な経営幹部を育成するには、以下でご紹介するポイントを押さえておくことが大切です。
未来を見据えて育成の方向性を定める
経営幹部を育成する際は、あらかじめその方向性を明確にする必要があります。なぜなら、方向性を定めないことには育成計画を立てられないからです。
育成計画とは、「誰を・どのような内容で・どういう風に育成していくか」という計画のこと。5年後・10年後の自社を取り巻く環境を予測しながら育成計画を立て、具体的な方向性を決めることで、自社の未来を担うのに相応しい経営幹部を育てることができます。
経営幹部候補となる社員を選抜する
上述のとおり、経営幹部は企業の成長に貢献できる、優秀な人材が務めるのが一般的です。しかし、経営幹部には能力のほか、企業の経営を担う覚悟や志の高さも必須なので、社員の中から幹部候補を選抜する際はその片鱗やポテンシャルを見抜くことも重要です。
志の高さを見分ける際は、社員の言動や仕事ぶりをチェックしましょう。例えば、新事業に対するチャレンジ精神、部署・チームで解決すべき課題への当事者意識などがポイントになるかもしれません。
このほか、自らの今後のビジョンを語れたり、組織を作り上げる能力が備わっていたり、周囲に好ましい影響を与えていたりする社員も、経営幹部候補の素質があるといえます。
経営幹部候補を社員から選抜するには、企業に必要なリーダー像を明確にすることが大切です。そうすれば、能力・ポテンシャルの両方で適切な人材を選びやすくなるでしょう。
方向性をもとに育成の方法・内容を決める
方向性の明確化・幹部候補の選抜が終わったら、経営幹部を育成する方法とその内容を決める必要があります。具体的には、実際の業務を任せて、その経験によって成長を促すのが一例です。
ただし、経営幹部候補となる社員によって備わっている能力や強み・弱みは異なります。そのため、まずは1on1ミーティングを行い、対象となる社員について理解を深めるのがおすすめです。備わっている能力はもちろん、習得すべき能力も把握できるため、育成方法を決めやすくなります。
1on1ミーティングを通して、もし経営に関する専門的な知識の習得が必要だとわかったら、そのときは研修を実施するのが堅実です。経営に精通した外部講師による質の高い研修を受けることで、経営幹部候補として大きく成長できる可能性があります。
まとめ
経営幹部は、経営者をサポートし、企業のさらなる成長を図る上で欠かせない存在です。そのため、もし自社に経営幹部となる人材がいないのであれば、今いる社員の中から候補を選抜し、育成することをおすすめします。その際は、今回ご紹介した「経営幹部に必要な6つの知識・スキル」と「経営幹部を育成する際のポイント」をぜひご参考にしてください。
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