多角化戦略でさらなる成長を図ろう!押さえておきたい種類とメリット・デメリット

「新規事業に取り組みたいがリスクは避けたい……」という経営者の方は、多角化戦略に目を向けてみてはいかがでしょうか。
今回は、多角化戦略の概要や種類、メリット・デメリットについて解説します。あわせて、多角化戦略を成功させた企業の事例もご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ひとつの事業に絞らない!多角化戦略とは
多角化戦略とは、自社の経営資源を活かし、関連性のある新たな事業に取り組む戦略のことです。

米国の経営学者 イゴール・アンゾフ氏が提唱した「成長マトリクス(企業の成長戦略の4つの分類)」のひとつであり、経営資源を有効活用できる、収益を拡大できるなどのメリットが期待できます。
なお、成長マトリクスの残りの分類は「市場浸透戦略」「市場開拓戦略」「製品開発戦略」です。
多角化戦略が注目されている背景には、「消費者のニーズの多様化」と「競合企業の増加」が関係しています。具体的には、消費者のニーズの多様化、そして競合企業の増加により、ひとつの事業に投資するリスクが極めて大きい時代になっているのです。
こうした現状に対応するには、既存の事業に固執せず、新たな商品・サービスを模索することが欠かせません。そのため、今多角化経営に注目が集まっていると考えられます。
それぞれで特徴が異なる!多角化戦略の4つの種類

成長マトリクスのひとつである多角化戦略はさらに細分化でき、以下の4つの種類があります。

1.水平型多角化戦略
水平型多角化戦略とは、所有する生産技術を活かして既存事業と似た市場に新たな商品・サービスを投入する戦略のことです。たとえば、「作業服の製造・販売を手掛けているブランドがカジュアルウェアの製造・販売に乗り出す」といったケースが挙げられます。
水平型多角化戦略では既存の技術や設備、流通経路などを活用できるため、コストをグッと抑えることができます。また、既存事業と似た市場を対象にしていることから、これまでのノウハウを活用できるため、失敗のリスクも最小限に抑えられるでしょう。
2.垂直型多角化戦略
垂直型多角化戦略とは、新たな技術を活用して既存事業と似た市場に新たな商品・サービスを投入する戦略のことです。たとえば、「スマートフォンの製造・販売を手掛けているメーカーがスマホケースを製造・販売する」といったケースが挙げられます。
垂直型多角化戦略は、新しい技術を一から導入する必要はあるものの既存事業と似た市場を対象にしていることから、既存の顧客やクライアントに対する販売力が高いのが特徴です。また、スマートフォンならスマホケースだけでなく、画面保護フィルムや落下防止スタンドなど、扱う商品をどんどん増やすことで顧客にワン・ストップ・サービスを提供することもできます。
3.集中型多角化戦略
集中型多角化戦略とは、所有する生産技術で作れる新商品・サービスを、既存事業との関連が少ない市場へ投入する戦略のことです。たとえば、「カメラメーカーが持つ“カメラレンズの製造技術”を医療機器の製造に用いる」といったケースが挙げられます。
集中型多角化戦略は、新しい分野に挑戦することになるため新規開拓の必要があるものの、これまで蓄積した生産技術やノウハウを活用できるので、比較的着手しやすいのが特徴です。また、既存事業とのギャップからプラスの評判を得られる可能性もあり、知名度の向上が期待できます。
4.集成型多角化戦略(コングロマリット型多角化)
集成型多角化戦略(コングロマリット型多角化)とは、保有する生産技術や既存事業と関連性がない、未知の世界へ参入する戦略のことです。たとえば、「ファッションブランドが飲食事業に乗り出す」といったケースが挙げられます。
集成型多角化戦略ではこれまでのノウハウを活かせないため高い初期投資が必要となるものの、ビジネスの可能性を広げられるほか、成功すればこれまで以上の収益を得られる可能性があります。
ただし、失敗して損害を生む可能性もゼロではないため、ハイリスクハイリターンだということを十分に理解しておくことが大切です。
押さえておこう!多角化戦略のメリット・デメリット

では、多角化戦略を策定・実行することにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
多角化戦略のメリット
多角化戦略のメリットは、主に以下の3つです。
1.相乗効果が期待できる
多角化戦略により既存事業と関わりのある新規事業を展開することで、相乗効果(シナジー効果)を得ることができます。具体的には、生産技術や機械設備、流通経路などを共有することで、業務の効率化やコストの削減などのメリットを得られます。
多角化戦略の種類によって期待できる相乗効果は変わり、たとえば水平型多角化戦略の場合は、既存事業と同じ生産技術を活用できる上に、これまでの販売・流通経路をそのまま利用できることから、生産・販売・流通の3つにおいてコストを削減することが可能です。
2.リスクを分散できる
ひとつの事業に注力している場合、企業の成長が停滞する可能性があります。なぜなら、万が一技術革新をはじめとする予想できない外部環境の変化により打撃を受けた場合、事業を継続させることが困難になるからです。
その点、多角化戦略を策定し実行すれば複数の事業を同時進行できるため、全体の収益が安定すると同時に、企業の成長が停滞するリスクを軽減することができます。つまり、ひとつの事業がうまくいかなくてもほかの事業でカバーできる、柔軟な経営を実現しやすくなります。
3.経営資源を効率よく活用できる
既存事業だけでは、経営資源を最大限活用することが難しいケースもあります。
その点、多角化戦略を策定し実行すれば過剰となっている人材や設備を新規事業に活用でき、経営資源の効率化を図ることができます。たとえば多目的スタジアムは、春・夏・秋には野球やサッカーなどのイベント会場として営業できますが、多くのスポーツがオフシーズンとなる冬には休業せざるを得ないのが現状です。
しかし、冬にスキーやスノーボードのイベント会場として営業することで、土地や建物を無駄なく活用できます。これにより、企業の収益を高められるほか、社員の収入にも貢献することが可能です。
多角化戦略のデメリット
多角化戦略のデメリットは、主に以下の2つです。
1.企業価値が低下する可能性がある
多角化戦略によって、これまで築いてきたブランドのイメージが崩れる可能性があります。具体的には、「安くて高品質」というブランドイメージを確立していた企業が、多角化戦略として高級な飲食店の経営を始めた場合、安いというイメージの崩壊を招く危険性があるのです。
こうした影響により企業価値が低下すると、これまでの顧客が離れて収益が悪化するほか、新規顧客の獲得が難しくなることもあります。
2.非効率な経営になる可能性がある
多角化戦略によって、経営が非効率になるケースもあります。
たとえば、ひとつの事業のみを行っている場合は、大量発注によりコストを削減することができます。しかし、大量発注を複数の事業にそのまま反映した場合、そもそも大量発注が合わない、在庫を抱えるなどで、悪影響が及ぶ可能性があるのです。業務を効率化するはずがかえって複雑になる可能性がある点は、多角化戦略のデメリットといえるでしょう。
参考にしよう!多角化戦略を成功させた企業の事例
最後に、多角化戦略を成功させた企業の事例をご紹介します。
富士フィルム株式会社
富士フィルム株式会社は、カメラやビデオカメラ、それらのフィルム、現像装置などの製造・販売をメインで行う企業です。そんな同社は、1980年10月に新リアルタイム臨床化学検査システム「富士ドライケムシステム」を開発しました。これは、既存事業である写真フィルムの製造で培われた「薄膜を多層同時に塗布する技術」や「カラー写真の評価技術」を応用して開発したシステムです。
富士ドライケムシステムは発表以来、「世界で初めての全血を用いて化学分析のできる多層フィルム式臨床化学検査システム」として医療関係者から大きな注目を浴びました。
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
株式会社セブン‐イレブン・ジャパンは、日本のコンビニエンスストアチェーンのひとつです。同社は「セブン‐イレブンにATMがあったら便利なのに」というお客さまのニーズに応えるため、2001年5月にセブン銀行を創業しました。そこから21年経った今も、コンビニの利便性を高めるサービスとして広く支持されています。
また、同社はこれで満足せず、「成長戦略」「社会課題解決への貢献」「企業変革」を柱に第2の成長の具体化を進めています。
ソニー株式会社
ソニー株式会社は、日本を代表する総合電機メーカーです。家電だけでなく計測器や電池の販売・製造も行っているほか、1968年3月には「CBS・ソニーレコード(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)」を立ち上げ、音楽事業にも進出しています。
そして、1970年代前半には生命保険に目を向け、1981年4月1日に「ソニー・プルデンシャル生命保険」の営業を開始しています。
まとめ
収益を安定させつつ企業の成長を図るには、多角化戦略を実行するのがおすすめです。経営資源を効率よく活用しながら経営に関するリスクを分散できるため、既存事業との相乗効果が期待できます。ただし、多角化戦略にはデメリットもあるので、あらかじめ確認して対策を練ることも大切です。種類やメリット・デメリットをよく理解した上で、自社に合った多角化を実現させましょう。
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