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採用ノウハウ

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採用につながるインターンシップとは?実施するコツと事例を参考に優秀な人材を確保しよう

インターンシップは、学生にとって知識・経験を積める絶好の機会です。企業にとっても、自社の魅力をアピールできる場であるとともに、人材採用のきっかけ作りにもなります。そのため、「インターンシップを通して優秀な人材の採用につなげたい」と考える企業は少なくありません。

そこで今回は、採用直結インターンを取り巻く状況や学生のインターンシップに対する意識・考え方をはじめ、インターンシップの流れ、採用につなげるコツ、気を付けるべきことなどについてご紹介します。ぜひ、ご参考にしてください。

押さえておこう!採用直結インターンを取り巻く状況

そもそもインターンシップとは、企業の場で経験を積むいわゆる「職場体験」のことです。学生はインターンシップを通じて「仕事上でどんな能力が求められるのか」が把握できます。一方で、昨今新卒採用の売り手市場化が進んでいるため、企業にとってインターンシップは優秀な人材と早めに接触できるチャンスといえます。実際、採用直結型のインターンシップを実施している企業も少なくありません。

このような採用直結型のインターンについて、早期の就職活動が学業に影響を及ぼすことを大学側は強く懸念しています。このことから、2017年には文部科学省から「採用直結型のインターンシップは避けるべき」と声明が発表されました。

その後、2021年4月には経団連と大学側がインターンシップの定義を見直す報告書を公表。「実務体験を伴わない内容に関してはインターンシップと呼ばない」「企業側は採用選考を視野に入れた評価材料を得る目的でインターンシップを実施できる」と発表しています。

そして2022年4月には、経団連が産学協議会を開き、「採用活動前のインターンシップで得た情報を自社の採用選考に活用できるようにすること」を盛り込んだ報告書をまとめました。
これらの動きによって、採用直結型のインターンシップが今後より一層広がるかもしれません。

しかし、あくまでも大学側が求めているのは「キャリア教育としてのインターン」であることに変わりはありません。また企業側に関しても、採用目的という意味であっても「学生の満足度(学生自身の成長・新しい経験に資すること)」を重視するインターンシップを行うことが、自社への志望度を高める上で大切です。そのため、企業側には会社説明だけに終始しないプログラムを組んでインターンシップを実施していくことが求められます。

参照:インターンシップの推進に当たっての基本的考え方|文部科学省
   採用直結のインターン認めず 有識者会議「学業の妨げ」|朝日新聞
   インターンの採用直結認めず 有識者会議「学業の妨げ」|日本経済新聞
   採用と大学教育の未来に関する産学協議会 2020年度報告書「ポスト・コロナを見据えた新たな大学教育と産学連携の推進」―概要―|一般社団法人 日本経済団体連合会
   インターン「採用目的OKに」 経団連と大学が報告書|朝日新聞
   インターンシップ、「実務体験」で定義 経団連が報告書|日本経済新聞
   インターン情報、活用可能に 採用活動、政府に要請へ―経団連・大学|JIJI.COM

実際の参加率は?学生のインターンシップに対する意識・考え方

では、学生はインターンシップに対してどのような意識・考え方を持っているのでしょうか。

就活会議株式会社とHR総研が2022年卒の学生を対象に行った調査では、「全体の90%以上の学生がインターンシップに参加した」という結果が出ています。そのうち、もっとも割合が多かったのは4〜6社のインターンシップに参加した学生であり、全体の30%を占めています。
2021年卒の学生を対象に行った調査と比較すると、4社以上・10社以上のインターンシップに参加した学生の数が増えていることから、ひとりあたりの参加社数は増加傾向にあると考えられます。

また、株式会社ディスコが2023年卒の学生を対象に行った調査では、「インターンシップ先を探す際に重視したこと」という問いに対し、「とても重視した」「やや重視した」の合計がもっとも多かったのは「プログラム内容の詳細が記載されていること」という結果が出ています。
この点から、学生はインターンシップを選ぶ際、内容で決めていることがわかります。つまり、自社インターンシップへの志望度を高めるには、学生の満足度を重視した内容でインターンシップを企画する必要があるということです。

さらに、株式会社ディスコの同調査の「インターンシップ参加前後の就職志望度の変化」に関しては、参加前は「この企業に就職したい」が25.4%だったのに対し、参加後は46.1%に増加しています。この結果から、インターンシップに参加し企業や業務への理解を深めたことで、就職先として意識し始めたり志望度を高めたりする学生は決して珍しくないとわかります。

参照:HR総研×就活会議:2022年卒学生のインターンシップと就職活動への意識調査 結果報告|HRpro
   2023年卒 特別調査 インターンシップ特別調査|キャリタス就活2023

計画から選考までの手順を伝授!インターンシップの流れ

では、インターンシップはどのような流れで進めたらよいのでしょうか。以下にて、計画から選考までの一般的な流れをご紹介します。

1.目的を決める

インターンシップの募集を行う前に、まずは目的を決めなくてはなりません。仮に目的を定めず実施すると、企業の魅力を十分に伝えられず、また参加する学生にとっても意義の無い時間になってしまいます。お互いにとって意味のあるインターンシップを実現するためにも、「自社への志望度を高めるため」「業務への理解を深めてもらうため」などの切り口から、より具体的な目的を決めるようにしましょう。

2.内容を決める

目的を決めたら、次にインターンシップの内容を深掘りしていきます。

たとえば、自社の業務理解度を高めたい場合は、「実際の業務内容に沿ったグループワークの実施」「先輩社員とのディスカッション」などを組み込むのがおすすめです。現場で実際に取り組む業務がより伝わるようなプログラムを組むことで、参加した学生の自社への志望度を高めやすくなります。このような業務体験型では、3日~1週間程度の日程で開催できると理想的です。1日だと時間が足りず業務の全体像を十分に伝えられない可能性がありますが、3日~1週間程度の時間があればしっかり届けることができます。

3.関係者に周知・スケジュール調整

インターンシップの内容を決めたら、関係者に周知してスケジュール調整を行います。具体的には、運営に関わる社員たちに対して、当日のプログラムや進め方、役割の共有を行います。必要に応じて、コンテンツの壁打ちを依頼し、プログラムの改善を図る場合もあります。参加者に企業の魅力を伝えるには、携わる社員や部署全体が一丸となって取り組んでいく必要があるので、関係者に早めに周知して当日問題なく参加ができるか、スケジュールを調整するようにしましょう。

4.募集方法を決める

続いて、募集方法を決めていきます。募集方法は、主に「インターンシップ専用の求人サイト」「大学のキャリアセンター」「自社のサイト」の3つに大別されます。

インターンシップ専用の求人サイトは、掲載費用などが発生してしまうものの不特定多数の方に認知してもらうことが可能です。そのため、母集団を増やしたい企業にぴったりな募集方法といえます。

大学のキャリアセンターを利用する場合は、大学・学部を選んで求人票を出すことが可能です。たとえば専門職なら、その分野を学んでいる学生をターゲットに絞って求人票を出せるので、ある程度の知識を持った方に参加してもらうことができます。ただし、大学によっては「学業への影響」を考慮し、インターンシップの案内は断られてしまうケースもあります。

自社のサイトを活用する場合は、基本的に自社に対し興味・関心を持つ学生が募集してくるので、志望度が高い方に参加してもらえるでしょう。ただし、母集団形成がしにくいというデメリットがあります。多くの方に認知してもらうには、ダイレクトリクルーティング(スカウトサイト)などほかの募集方法と組み合わせたり、SNSを活用したりといった工夫が必要です。

5.選考

インターンシップの開催回数と定員数が少ない場合、応募した学生全員に参加してもらうのは不可能なため、選考が必要になります。選考がある場合は必ず求人にも記載し、また社内でも事前に選考基準と日程を決めておくようにしましょう。

優秀な人材を確保しよう!インターンシップを採用につなげるコツ

インターンシップを採用につなげるためには、以下の5つのコツを押さえることが大切です。

早期選考を心掛ける

インターンシップから本選考につながりにくい原因のひとつに、インターンシップから本選考までの期間が半年以上空いてしまい、学生が離脱してしまうということが挙げられます。参加時には、その企業への関心が高い学生であっても、他社企業と接点を持つことによって目移りし本選考に載らないケースが多くなっています。インターンシップ参加後の、企業への興味関心度が高いうちに、本選考を行っていきましょう。

学生の満足度を重視した内容にする

インターンシップの内容を決める際は、参加する学生の満足度を重視することが大切です。
そもそもインターンシップのゴールは、たくさんの学生の興味を惹くこと、そして就職先候補に自社を入れてもらうことです。にもかかわらず、自社の魅力を一方的に伝えるだけのインターンシップになってしまっては、そのゴールには到底辿り着けません。そのため、「業界について理解を深めたい」「就業体験を通して適性の有無を把握したい」といった学生のニーズに応え、満足度を高められるような内容にすることが大切です。

体験型のプログラムを取り入れる

会社説明会を行った場合、参加した学生は事業内容や福利厚生などの情報を理解できるようになります。しかし、それだけでは自社に対するエンゲージメントを高めることはできません。
学生のエンゲージメントを高めて就職先候補に自社を入れてもらうためには、たとえば学生に「企業の一員として業務に携わった」という経験を提供することも大切です。そのため、インターンシップを採用につなげるなら、就業体験や座談会をはじめとする体験型のプログラムを取り入れるなど、エンゲージメントを意識したプログラムも検討することが望ましいといえます。

学生一人ひとりの振り返りを行う

このほか、インターンシップの最終日などに、参加者の振り返りを行うのもコツのひとつです。
インターンシップを通して学生は、これまで関わってこなかった分野に関する知識を得たり、はじめての経験を積んだりします。このとき、自分の社会人としてのレベル・現在地を把握できれば、それは学生にとって大きなメリットになるでしょう。

そこで実施したいのが振り返りです。社員との差を実感した上で、振り返りによって自分がやるべきことに気付ければ、学生は就職活動に向けて士気を高めやすくなります。また企業にとっては、振り返りを行うことで学生に「この会社なら自分は成長できそうだ」と思ってもらいやすくなるのです。
これらの点から、入社後のイメージを具体的に抱いてもらうために、インターンシップでは振り返りを実施するのが望ましいといえます。

万全なフォロー体制(オンライン・オフライン)

先述した早期選考の実施が難しい企業も中にはあるかと思います。そういった企業の方は本選考までの間に、学生と企業が直接つながることのできる体制を組むことが重要です。具体的には、下記のような例が挙げられます。

インターンシップに参加した学生限定懇親会・座談会の実施

インターンシップへの参加を終えた学生の多くは、企業を無意識のうちに比較していることがほとんどです。このとき、ほかの学生の意見を聞くことができれば、それは学生にとって大きなメリットになります。また、社員の声まで聞くことができると、たとえばインターンシップで聞きそびれた質問を再度確認でき、より比較・検討がしやすくなるでしょう。

そのため、インターンシップに参加した学生をフォローする取り組みとして、参加学生限定で懇親会や座談会を実施することは、企業にとっても学生にとっても有益といえます。

インターンシップに参加した学生への連絡・定期的なメッセージ

インターンシップに参加した学生とは小まめな連絡を行うことで、つながりや志望度を維持することができます。定期的なメルマガのようなコンテンツのほか、学生グループごとに個別化したメッセージ、さらに個々人別の双方向性のあるやり取りなど、形式はさまざまです。

「すべての学生に個別にやり取りするのは大変だけれども、選考に来てくれそうな学生をおざなりにしたくない」という場合は、やり取りの中でスクリーニングすることも考えられます。
たとえば、インターン終了後の初回メッセージでは、簡単な挨拶とともにインターンシップの感想を尋ねる内容を送ります。このとき、挨拶だけだと学生が返信に困る可能性があるため、返信しやすいよう質問ベースにするのがおすすめです。

そして初回後は、返信の内容・速度をもとにメッセージを送る頻度を変えていきます。たとえば、具体的には以下のような対応分けが考えられます。

返信が速く内容が具体的志望度が高い可能性があるため、比較的多めにメッセージを送る
返信が遅く内容が具体的志望度は高いと予測できるが、企業から頻繁にメッセージを送ると返信が来ない恐れがあるため、ほどほどに連絡する
返信が遅く返信がない(内容に具体性がない)志望度はあまり高くないと考えられるが、今後応募してくれる可能性もあるため、定期的にメッセージを送る

くわえて、メッセージを送る場合は利用するツールも検討しましょう。

学生の多くは、就職活動用のアドレスを使って複数の企業と連絡を取っています。そのため、メールでのやり取りが続くと、ほかのメールに埋もれてしまう可能性があります。したがって、開封率を重視するなら学生の利用頻度が高いLINEを活用するのも一計です。

もちろん、学生によってはLINEに企業のメッセージが来ることが負担な可能性もありますので、そこを考慮してメールやマイページへのメッセージにすることも考えられます。
さらに、親近感を重視して電話などを組み合わせることもあり得るでしょう。ツールの特性や利用目的を整理してフォローに活用しましょう。

定期的な動画配信

インターンシップ後の学生に対するフォローとして、動画配信を実施するのもおすすめです。

動画配信は「録画動画」と「ライブ動画」の2つに大別できます。
録画動画は、自社のホームページやYouTubeに掲載されることが多い、事前収録した動画のことです。たとえば内容を企業説明などにすることで、自社についてさらに理解を深めてもらうことができます。また、インターンシップで聞きそびれた事柄があったとしても、動画で確認することが可能です。これにより、学生の心残りを解消する効果が期待できます。

ライブ動画は、事前に収録した映像ではなく、リアルタイムで配信する動画のことです。社員による座談会やオフィスツアーなど、リアルタイムで開催しているイベントの映像を学生に届けることができます。インターンシップでは伝えられなかった情報を共有することもできるため、学生の満足度を重視したフォローを行うことが可能です。

他社を参考にしてみよう!採用直結のインターンシップの事例

採用直結のインターンシップを成功させている企業の事例を知り、それを参考にするのも一案です。

第一生命保険株式会社

第一生命保険株式会社では、3つのインターンシップを実施しており、そのどれもが実際の業務を体験しながら生命保険業界の理解を深められる内容になっています(※2022年5月時点。3つともすでに募集は終了)。
学生に「企業の一員として業務に携わった」という経験を提供できていることから、採用直結のインターンシップになっていると考えられます。

参照:INTERNSHIP 2023|第一生命

株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントは、過去にゲーム制作の現場に携わりながらゲームシナリオのプロットやシナリオを制作する「就業型インターンシップ1Page」を開催しています。このインターンシップには、2022年卒業の方に限り「デザイナー・クリエイターコースの本選考において、一部選考が免除される可能性がある」といった特典がついていました。このような採用につながる工夫から、「就業型インターンシップ1Page」はまさに採用直結のインターンシップといえます。

参照:就業型インターンシップ「1Page」(22卒最終募集)|Cyber Agent

あわせて確認しておこう!企業が気を付けたい2つのこと

インターンシップを行う際は「賃金」「機密情報の取り扱い」の2つに注意が必要です。

1.賃金について

インターンシップには、「有給」と「無給」の2種類があります。有給の場合は、最低賃金を下回らないよう金額を設定しなければなりません。また、インターンシップの学生が労働者とみなされた場合は、労働基準法が適用されることもあります。トラブルを未然に防ぐためにも、有給のインターンシップを行う際は労働基準法に則り計画を立てましょう。

2.機密情報の取り扱い

インターンシップを行う場合は、機密情報の取り扱いにも十分気をつけなければなりません。仮に、学生が企業の機密情報にアクセスできる環境の場合は、誓約書を取り交わす必要があります。万が一情報が漏れてしまった場合は、学生に対し損害賠償請求を行わざるを得ないことも。こうした事態を防ぐためにも、インターンシップの際は事前に機密情報の取り扱いについて周知し、どのような状況になったら損害賠償請求が発生するのかまで伝えておくようにしましょう。

まとめ

インターンシップを行うことは、企業と学生それぞれにメリットがあります。しかし、すべての企業がインターンシップからの採用に成功しているわけではありません。インターンシップで学生の志望度を高めるためには、学生に有益となるような取り組み方で実施することが大切です。インターンシップを通して優秀な人材を採用できるよう、今回ご紹介した内容をぜひご参考にしてください。

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この記事の著者

寛之大内