採用計画を立てる際の主要項目とは?立案前に確認すべきこととあわせて押さえよう

「採用活動を行っているのになかなか人が集まらない」と、悩んでいる採用担当者の方もいるのではないでしょうか。採用活動を成功させるには、「採用計画」は必要不可欠です。
採用計画とは?
採用計画とは、「どのくらいの人数をいつまでに採用するか」「どの方法で採用するか」「どのような人をどこの部署に配置するか」などの計画を、事業計画をもとに立てることを指します。そのため、採用計画を立てる際は事業計画を正確に把握しておくことが大切です。くわえて、経営方針も理解しておく必要があり、そうすることでビジネス戦略と一体化した採用計画を立てられます。
関連コラム:若き採用担当の悩み②新卒採用の採用計画の立て方【第2回 採用賢者に聞く】
新卒と中途における採用計画の違い
新卒採用と中途採用では、採用計画の内容が変わってきます。
まず、採用計画の主な項目の違いは以下のとおりです。目的はもちろん、採用基準や採用手法、マナー研修の有無も大きく異なるため、まずはこの違いを理解することが大切です。

このほか、採用計画を立てる際のポイントにも違いがあります。
新卒採用の採用計画を立てる際のポイント
新卒採用の対象は、主に社会人経験のない学生です。自社や業務について十分に理解してもらうには、中途採用よりも丁寧で豊富な情報を提供する必要があります。また、コミュニケーションを取る中で「どのような業務が適しているか」を企業側で判断しなければなりません。
そのため、面談を多く実施するほか、いくつかの部署の社員と話す機会を設けるなどして、中途採用に比べて密なコミュニケーションを取ることが求められます。くわえて、社会人になることに不安を感じている内定者へのフォローも必要です。万が一フォローを怠ると、内定辞退や早期退職につながる可能性があります。これでは、せっかく長く勤めそうな学生を採用できても意味がありません。
これらの点から、新卒採用は中途採用以上にプロセスが多いとわかります。そのため、新卒採用の採用計画は「新卒採用ならではの工数」を把握して立てることが重要です。
中途採用の採用計画を立てる際のポイント
新卒採用は、毎年同じような時期・スケジュールで行われます。これに対し中途採用は、人材不足になったタイミングで行われるのが一般的です。そのため、その時々に「いつまでに・どのような能力をもった人材を採用する必要があるか」を考えて採用計画を立てる必要があります。
また、急に欠員が出てしまいスピーディーな採用が求められるのも、中途採用ならではの特徴です。しかし、求職者は選考時点では元の企業に在籍しているケースが多いのが現状です。この場合、内定を得てから元の企業に退職を申し出て、仕事の引き継ぎをしたのち退職する必要があるため、一般的に内定から入社までに1〜2か月程度かかります。
この点から中途採用の採用計画を立てる際は、内定から入社までの期間も考慮することが大切です。
採用計画の必要性
採用計画を立てずに採用活動を行うと、面接官が複数いる場合は採用基準にズレが生じてしまいます。それにより、優秀な人材を確保しづらくなるだけでなく、企業のニーズに合わない人材を採用してしまう可能性も考えられます。
また、採用活動にはどうしてもコストがかかってしまいます。「いつまでに」と期間を決めずダラダラと採用活動を行うとその分コストがかかり、事業計画に影響を及ぼしかねません。
これらの点から、採用計画は「採用基準のズレを無くして優秀な人材を確保する」「採用活動の進捗状況を把握し無駄なコストを抑える」といった面で必要だといえます。
このほか、2018年10月に一般社団法人 日本経済団体連合会(以下 経団連)が「『採用選考に関する方針』を策定しない方針」を表明したことも、採用計画が必要な理由のひとつです。
これにより、就職活動に関するルールの取り決めが政府主導に変わったことで、広報活動・採用選考活動開始のタイミングが以前と比べて数か月後ろ倒しになりました。その結果、選考にかけられる時間が短くなったため、より綿密な採用計画を立てた上で採用活動を行う必要性が出てきたのです。
採用計画立案前に確認しておくべきこと
採用計画立案前に確認しておくべきことには、以下の4つが挙げられます。
事業計画の把握
採用計画は、いわば「適切に人材採用・配置を実施することで、事業を成功させやすくするための計画」です。そのため、まずはベースとなる事業計画について正しく把握する必要があります。そうすることで、「採用人数が事業計画と合わない」「必要人数を採用したが、育成に携われる社員が足りない」といったトラブルを防ぎやすくなります。
求職者の動向や市場を調査
採用計画を立てるには、求職者の動向や採用市場を把握しなければなりません。これらを把握しておかないと戦略的な採用計画を立てられなくなってしまうためです。
たとえば、有効求人倍率が高い売り手市場の場合は、年収水準を高めるほか、複数の求人媒体・エージェントを使うなど採用コストを高めに見積もらないと、求める人材を採用できない可能性があります。事前想定が甘くいざ必要な採用人数に到達できないと、「計画を遂行しなければ」という焦りにより、企業のニーズに合わない人材を採用してしまう可能性も否めません。
こうした事態を防ぐためにも、採用計画を立てる際は前もって求職者の動向や市場を調査する必要があるのです。
採用課題の確認
採用計画を立てる際は、自社の採用実績をもとに採用課題を確認することも大切です。仮に「応募がほとんどない」という場合は、採用方法が適していない可能性があるほか、企業の魅力が十分に伝わっていない、募集条件が魅力を欠いている可能性があります。
このように採用課題を明確にすることができると、「それを改善するにはどうすべきか」という点が自ずと見えてきます。より効果的な採用計画を立案できるようになるため、採用課題の確認は欠かさず行うことが大切です。
採用競合の状況確認
採用計画を立てる際は、採用競合の状況確認も欠かさないようにしましょう。この場合の採用競合とは、同業他社のほかに同ポジションを採用している企業、採用ターゲットが同じ企業なども含まれます。 「他社がどのような採用活動を行っているのか」「他社にはどのような魅力があるのか」がわからないと、自社の状況を客観的に分析することはできません。
また、採用活動を有利に進めるには、ライバルと差別化を図ることが不可欠です。効果的な採用計画を立案するためにも、採用競合の状況と照らし合わせて、過不足がないか確認するようにしましょう。
採用計画を立てる際の主要項目

採用計画を立てる際の主要項目には、以下の7つが挙げられます。
1.自社の中長期的な採用ニーズを確認する
採用計画を立てる際は、「ビジョンを達成するにはどのような組織を目指すべきか」を考えた上で、3年・5年・10年、それぞれのスパンで想定される採用ニーズを把握することが大切です。
たとえば、短期的な採用ニーズ(欠員補充・進行中のプロジェクトの強化など)のもと採用計画を立てると、このまま少子高齢化が進行した場合に「若手の人材が欲しい」と思ってもなかなか若手を採用できない可能性があります。こうした事態を避けるためにも、目の前の課題に応じた採用ニーズだけではなく、中長期的な採用ニーズも考慮することが大切です。
2.採用目標を明確にする
採用計画を立てる際は、目標を決めなければなりません。経営方針や事業計画をもとに、「どのような知識・技術を有した人材が必要か」「どの部署に何人必要か」「いつまでに何人を採用する必要があるか」「1人あたりの採用予算はどれくらいか」などを明確にしましょう。
具体的な採用目標がないと採用活動がスムーズに進まない恐れがあるので、綿密に設定することが大切です。
3.採用したい人物像を明確にする
企業のニーズに合った人材を確保するには、採用したい人物像を明確にする必要があります。部署によって求める人物像は異なるため、それぞれの部署で「どのような知識・技術が必要か」「どのような経験があると嬉しいか」「必要最低限の能力は何か」などをヒアリングしましょう。
新卒採用と中途採用で人物像設定のポイントは異なります。
たとえば新卒採用の場合は、応募者は基本的に未経験者のため、人となりや自社との相性、志向に基づくポテンシャルを重視するのが一般的です。そのため、まずは「どのような考え方を持った人材と働きたいか」などをヒアリングするのがおすすめです。
一方、中途採用の場合は即戦力となる人材が求められるので、「具体的にどのようなスキルが必要か」を確認することが大切です。
募集要件を設定する
採用したい人物像が明確になったら、それを募集要件に落とし込みましょう。くわえて、求める知識やスキル、経験などに優先順位をつけておくことも大切です。
売り手市場である現状を踏まえると、募集要件を100%満たす人材を採用できる確率は決して高くありません。そのため、募集要件を設定するにあたって「絶対に必要な条件」「尚可な条件」などを擦り合わせておくことで、自社の採用ニーズによりマッチした人材を採用しやすくなります。
4.選考方法や採用基準を決める
選考方法や採用基準を明確にすることは、採用活動においてとても重要です。なぜなら、応募者を正確に選考する基準がないと、企業に適した人材かどうかを見極めるのが困難になるためです。
選考方法は、主に3つに分けられます。1つ目は、応募者の能力や仕事に対する意欲を読み取る「書類選考」。2つ目は、業界に関する知識をはかれる「筆記試験」。そして3つ目は、応募者の人となりを直に確認できる「面接選考」です。それぞれで応募者について確認できる内容は異なるため、どの選考方法を採用するか決めて、かつ合格ラインもあらかじめ設定しておきましょう。もちろん、3つとも取り入れても問題ありません。
採用基準は、面接官によって評価するポイントが異なる可能性があるため、前もって統一しておく必要があります。採用・不採用の基準が統一されていないと必要な人材を確保できなくなってしまうので、選考方法とあわせて採用基準も設定しておきましょう。
5.採用スケジュールを立てる
採用計画には、採用スケジュールも欠かせません。仮に、社内の受け入れ体制が整っていないまま採用してしまうと、十分なフォローができなくなる可能性があります。また、採用自体が間に合わない場合は、人員の不足により事業計画に狂いが生じる可能性もあるため、あらかじめ採用スケジュールを明確にしましょう。
採用スケジュールを立てる際は、まずこれまでの採用実績を参考に「応募率」「内定率」「採用率」などを洗い出しましょう。たとえば同じ採用人数であっても、採用基準が高く内定率が低い場合は、求人公開の時期を前倒しにしてなるべく多くの応募数を確保する必要があります。
このように必要な人数の採用やその後の育成にどのくらいの期間を設定すべきか逆算して、スケジュール化していきます。新卒採用の場合は卒業時期によって学生の就活スケジュールが大体決まっているため、その時期を軸としてスケジュールを立てれば概ね問題ありません。
一方、中途採用には明確な時期がありません。そのため、前述したように採用にかかる期間や社内の受け入れ体制を考慮した上で採用スケジュールを組み立てるようにしましょう。
ある程度スケジュールが決まったら、シミュレーションを実行するのがおすすめです。新卒・中途を問わず、求職者の「数を絞って求人にエントリーする」「複数社を検討している場合、先に内定が出た企業を優先する」といった行動から、採用の短縮化が進んでいます。この状況で企業が「想像以上の応募数で選考通過の連絡が遅くなった」「全応募者と面接してから合否を決めたい」といった対応をすると、求める人材に出会ったとしても採用につながらなくなる恐れがあります。
そのため、採用スケジュールを立てたら、現実的かどうかをシミュレーションで確認し、スムーズに進められるよう整えることが大切です。
6.採用手段や採用ツールを選定する
企業の採用率を高めるには、採用手段や採用ツールの選定も欠かせません。代表的な種類には、たとえば以下のようなものがあります。
【新卒採用向け】 ・新卒ナビサイトの利用 ・説明会やインターンシップの実施 ・大学の就職課への求人掲載 など 【中途採用向け】 ・転職サイトの利用 ・ハローワークの利用 ・ダイレクトリクルーティング など |
上述した採用手段や採用ツールは、ほんの一例です。ほかにもさまざまな種類があるため、採用したい人物像の性別や年齢のほか、自社の採用スケジュールなどを考慮したうえで決めましょう。
7.内定者へのフォロー施策を検討する
採用活動において「内定を出したら終わり」と考えることは危険です。内定辞退をする内定者も珍しくないため、内定後のフォロー施策も検討しておく必要があります。
たとえば、定期的に連絡を取り、内定者の状況や入社に対する不安・疑問を確認するのが有効です。内定者に寄り添うことで、入社への安心感を持ってもらいやすくなります。
内定者に寄り添いつつも、企業として内定者に望むこともあるでしょう。たとえば「入社までにこの分野を勉強しておいてほしい」「この知識を身につけてほしい」といった要望が挙げられます。
しかし、教育は入社後に行うのが基本のため、押し付けすぎないよう注意が必要です。無事に入社し活躍してもらえるようになるまでは「採用活動が成功した」とはいえないため、自社の要望を押し付けるのではなく内定者に寄り添うことを第一に考えるようにしましょう。
採用計画を見直す際のポイント

採用計画は一度立案したら終わりではありません。その時々にあわせて見直す必要があります。では、どのようなポイントに着目して見直せばよいのでしょうか。
無駄な費用はなかったか
前回立案した採用計画のもと行った採用活動の費用は、見直すべきポイントのひとつです。たとえば、特定の媒体からの応募が少なかった場合、無駄な費用がかかっていたと判断できます。
費用対効果が低い採用計画は非効率なので、「どの求人媒体を利用したか」「その媒体から何人採用できたか」を振り返り、求人媒体ごとに1人あたりの採用単価を算出して比較するようにしましょう(計算式:採用単価=利用した採用手法の費用÷採用人数)。そうすることで、費用対効果が高い求人媒体がわかるため、無駄のない採用計画を立てられます。
内定辞退の理由は何か
内定を辞退した内定者がいた場合、なぜ辞退したか理由を把握することが大切です。そうすることで、内定辞退を防げるような採用計画を立てやすくなります。
内定辞退の理由には、たとえば「他社のほうが内定が出るのが早かった」「勤務条件が合わなかった」「求人情報で見た情報や面接時に聞いた情報と現実が違っていた」などがあります。これらは、内定出しのスケジュールを早めると同時に、内定者と密にコミュニケーションを取ることで解決できる可能性があるため、次の採用計画に落とし込めば内定辞退を防ぎやすくなります。
なお、内定辞退を防ぐには「内定者フォロー」を行う必要もあります。その重要性や事例については以下の記事で詳しくご紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。
内定辞退を防ぐための内定者フォローの重要性!代表的5つの事例をご紹介
まとめ
企業をより大きく成長させるには、優秀な人材を採用することが大切です。とはいえ、昨今は有効求人倍率が高く売り手市場となっているため、採用活動を成功させるのは容易ではありません。そこで大切になってくるのが「採用計画」です。
採用計画を立案すれば、自社が必要とする人材を確保しやすくなるだけでなく、採用活動にかかるコストを最小限に抑えやすくなります。効率的な採用活動の実現の第一歩として、今回ご紹介した主要項目を参考に、企業に合った採用計画を立ててみてください。
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