事業ポートフォリオとは?作成・最適化して経営資源を適切に配分しよう

各事業の収益性や成長性、安全性を把握できていない場合、企業の成長が滞る可能性があります。もし心当たりがあるのなら、この機会に事業ポートフォリオを作成してみてはいかがでしょうか。
今回は、事業ポートフォリオに焦点を当て、その概要や作成するメリット、作成する際の考え方についてご紹介します。あわせて、事業ポートフォリオを最適化する方法も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
まずは概要を押さえよう!事業ポートフォリオとは
そもそも、ポートフォリオとは自分自身の知識やスキル、実績を周囲に伝えるための作品集のことです。そこから転じて、事業ポートフォリオとは企業が着手している複数の事業の一覧を指します。
事業ポートフォリオを作成すると、各事業の「収益性」「成長性」「安全性」などを可視化・一覧化し比較できるようになるため、今後の見通しが立てやすくなるというメリットを得られます。また、「限られた経営資源を有効活用するためにはどの事業へ投入するか」を判断する上でも役立ちます。
事業ポートフォリオが使われる場面として代表的なのは、企業の合併・買収を指す「M&A」です。
M&Aを成功させるためには、まず自社の強みや課題などを把握しなければなりません。事業ポートフォリオを作成することで、各事業の状況から自社の強み・課題を明確にできるため、M&Aを成功させやすくなります。
自社の成長につながる!事業ポートフォリオを作成するメリット

前半でも触れた事業ポートフォリオを作成することのメリットについて、以下で詳しく解説します。
経営判断を迅速に下しやすくなる
2020年に流行し始めた新型コロナウイルス感染症は、ライフスタイルはもちろん、ビジネスシーンにも大きな影響を及ぼしています。そのため、これから商品・サービスのニーズもさらに変化するのではないかと予測されています。
そんな中、事業ポートフォリオを作成すれば自社の事業の状況を俯瞰的に把握できるほか、事業が今のニーズに合っているかどうかを正確に判断しやすくなります。これにより、経営判断をより迅速に下しやすくなるでしょう。
ビジネスチャンスを見つけやすくなる
DXの普及やメタバースの台頭など、ビジネスを取り巻く環境は日々変化・進化しています。今の時代を生き残るには、こうした変化・進化に適応し事業を展開させなければなりません。
事業ポートフォリオを作成すれば、上述のとおり事業の状況を把握できるようになるため、どこに次のビジネスチャンスが潜んでいるかを見つけやすくなるでしょう。
財務体質を強化しやすくなる
ビジネス環境の変化が著しい今、急に金融危機が起こる可能性は決してゼロではありません。そのため、規模を問わず企業は日頃から財務体質の強化に努めることが大切です。
事業ポートフォリオを作成すれば、各事業の売上高(パーセンテージ)を一覧で確認できるため、自社の財務状況を把握しやすくなります。これにより、たとえば事業からの撤退や事業の譲渡などの経営判断を迅速に下すことができ、財務体質の強化を図りやすくなるでしょう。
3つのパターンがある!事業ポートフォリオを作成する際の考え方
では、事業ポートフォリオはどのように作成すればよいのでしょうか。以下で、作成する際の考え方を3つご紹介します。
1.PPM

PPM(Product Portfolio Management)は、「市場の成長性」と「市場におけるシェア」の2つの軸で事業を分類するフレームワークです。PPMを活用すれば、各事業の状況を確認しながら限りある経営資源の配分を最適化することができます。
PPMでは、まず「市場の成長性」を縦軸に、「市場におけるシェア」を横軸に設定します。縦軸の「市場の成長性」は、上にいくほど成長性が高く、下にいくほど成長性が低くなります。横軸の「市場におけるシェア」は、左に行くほど占有率が高く、右にいくほど占有率が低くなります。
縦軸と横軸を設定すると「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」といった4つのエリアができます。PPMでは、これらのエリアに自社の事業を分類します。

2.事業ドメイン
事業ドメインとは、企業の事業領域(事業を展開している範囲)や主力となる事業のことです。これを設定することで積極的に投資すべき事業を明確にでき、必要以上の事業展開を避けられます。
事業ドメインを設定する際は、主にCTM分析というフレームワークが用いられます。これは、「Customer(顧客)」「Function(機能)」「Technology(技術)」の3つの観点から自社の強みを分析するフレームワークです。

この分析によって、これまで自覚していなかった自社の強みを明確に把握できるため、事業ドメインの設定がより簡単に行えます。
3.コア・コンピタンス
コア・コンピタンスとは、他社には真似できない自社の強み、いわゆる企業の中核のことです。わかりやすくいうと、世界的な輸送機器メーカー「HONDA」のエンジン技術がその一例です。コア・コンピタンスを明確にすることで、その強みを活かせる経営・事業戦略を考えやすくなります。
コア・コンピタンスの条件は、「顧客に利益を与えること」「他社が簡単に真似できないこと」「複数の市場や商品・サービスに活かせる強みであること」の3つです。より正確に見極める場合は、事業を「模倣可能性」「移動可能性」「代替可能性」「希少性」「耐久性」の5項目で評価する必要があります。
作成した後が肝心!事業ポートフォリオを最適化する方法

事業ポートフォリオは「作成したら終わり」ではありません。作成後に最適化することが重要です。
事業ポートフォリオの最適化とは、すなわち「各事業に対して適切に経営資源を配分すること」です。その方法には、たとえばポートフォリオマネジメントシステムの導入があります。
ポートフォリオマネジメントシステムとは、事業を管理・評価するためのシステムのことです。このシステムを使って自社の特性を踏まえた評価の仕組みを構築することにより、 投資・撤退の基準を明確に設定できるほか、適切に経営資源を配分することができます。
このほか、全社的な戦略を推進するための組織・部門である「コーポレート組織」を設置することも効果的な方法といえます。なぜなら、事業ポートフォリオを最適化するには、各事業部がパフォーマンス(業績)を向上させる必要があるからです。
コーポレート組織には、経営資源をバランスよく分配するほか、各事業部の業績を評価する役割があります。評価時の業績によってはその事業部にインセンティブを付与することもあり、そうなれば事業部全体のパフォーマンス(業績)向上が期待できます。この点から、コーポレート組織の存在は事業ポートフォリオの最適化に大きく貢献するといえます。
まとめ
注力する事業を明確にしたり、各事業に経営資源を適切に分配したりするには、事業ポートフォリオを作成し最適化する必要があります。PPMを活用する、または事業ドメインを明確にすることで、比較的容易に作成できるので、「これから事業ポートフォリオを作成する」という方は、今回ご紹介した内容をぜひ参考にしてみてください。