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依願退職とは?企業が取るべき対応と基本の流れをご紹介

社員から退職の申し出があった際、焦らず正確に対応するには「依願退職」について理解を深めておく必要があります。

そこで今回は、依願退職の概要をはじめ、社員から依願退職の申し出を受けた際に企業がとるべき対応、依願退職の一般的な流れなどについてご紹介します。人事担当者の方は、ぜひご覧ください。

社員が退職の意思表示をする!依願退職とは

依願退職とは、社員が退職の意思を表明し、企業が承諾することで成立する退職方法のことです。

一身上の都合により社員が自ら進んで退職の意思を表明するという特徴から、大きく分類すると「自己都合退職」の部類に含まれます。ただし、社員が退職に至った原因が企業にある場合は、依願退職であったとしても会社都合退職と捉えられることがあります。

依願退職のケースは、主に「将来のキャリアに対するポジティブな退職」と「企業への不満から発生するネガティブな退職」の2つです。ポジティブな退職にはキャリアアップを見据えた転職やフリーランスへの転身、ヘッドハンティングが該当し、ネガティブな退職には待遇や労働環境に対する不満による退職、パワハラやセクハラによる退職が該当します。

依願退職と会社都合退職の違い

依願退職と会社都合退職の違いは、社員が退職の意思を示しているか否かにあります。

依願退職は上述のとおり、社員が退職の意思を表明し、企業が承諾することで成立する退職方法です。これに対し会社都合退職は、企業の都合による退職のほか、企業が社員に退職を促すことで成立する退職方法を指します。社員に退職の意思がなくても退職するよう要求されるのが特徴です。

なお、会社都合退職は企業から社員に「退職してほしい」という意思を示す形態になっていますが、解雇とは異なり社員の了承を得ることで成立します。そのため、 互いの同意があって成り立つという点は依願退職と同じといえるでしょう。

有給やボーナスはどうなる?依願退職の申し出を受けた際の対応

では、社員から依願退職の申し出があった場合、企業はどのような対応をすればよいのでしょうか。

年次有給休暇:条件を満たしていれば取得できるようにする

年次有給休暇(以下 有休)は「6か月間継続して勤務しており、かつ全労働日の8割以上出勤した労働者」に付与される休暇なので、この条件を満たしていれば依願退職を申し出た社員も退職日までに取得することができます。そのため、企業としては社員が退職するまでに有休をすべて使い切れるよう逆算して退職日を設定することが大切です。

なお、社員に有休を取得させない目的で企業がそれを買い取ることはできません。ただし、「社員が退職日までに取得できなかった分の有休を企業が買い取る」など、有休の取得を抑制しないケースであれば例外的に認められることもあります。

参照:年次有給休暇取得促進特設サイト|厚生労働省

ボーナス:自社の就業規則に則る

ボーナスの支給については法律による定めがないため、企業の就業規則に則るのが一般的です。

たとえば、ボーナスの支給対象者を“支給日に企業に在籍している社員”とする「支給日在籍要件」を規定している場合、もし依願退職を申し出た社員が支給日にまだ企業に在籍しているのであればボーナスを支給する必要があります。一方で、支給日前に退職した場合は支給する必要はありません。

このほか、企業の就業規則にボーナスが減額する条件や基準を規定し、その内容を社内に周知していれば、ボーナスとして支給する金額を減らすことができます。

ただし、その場合は企業側の一方的な対応だと捉えられないよう、ボーナスの側面である「今後の貢献への期待」について在職者とは立場が異なることを必ず説明しましょう。

なお、退職者・退職予定者へのボーナスの支給については、以下の記事で詳しく解説しています。こちらもあわせてご覧ください。

退職者・退職予定者にもボーナス(賞与)は支給すべき?基本の考え方と減額方法について 

退職金:自社の就業規則に則る

退職金についてもボーナスと同様に法律による定めがないため、企業の就業規則に則るのが一般的です。退職金制度がある企業の場合は、依願退職を申し出た社員にも退職金を支払う必要があります。

支給条件や支給額の算出方法は企業によって異なりますが、依願退職の場合も通常の自己都合退職と同額の退職金を支給するケースが多くなっています。

失業保険:スムーズに受給できるよう対応する

失業保険は「失業した人が安定した生活を送りつつ、1日も早く再就職できるよう求職活動を支援する制度」なので、依願退職を申し出た社員も受給することができます。そのため企業としては、社員が失業保険給付をスムーズに受けられるよう、離職票の交付に必要な「離職証明書」や「雇用保険被保険者資格喪失届」を速やかに作成する必要があります。

なお、依願退職の場合、離職証明書の離職理由は「労働者の個人的な事情による退職」となるので覚えておきましょう。

依願退職における失業保険の支給開始時期は、最短でも7日+3か月です。そのため、社員にもその目安を伝え、求職活動を促すようにしましょう。

参照:離職された皆様へ|厚生労働省

フローを押さえよう!依願退職の一般的な流れ

社員から依願退職の申し出があった際に慌てないよう、大まかな流れを把握しておきましょう。

1.退職日を決める

社員から依願退職の申し出を受けたら、まず社員と相談しながら退職日を決めます。社内で混乱が起きないよう、有休の取得期間・業務の引き継ぎ期間も考慮して決めることが大切です。

2.社員に退職願を提出してもらう

退職日が決定したら、社員に退職願を提出してもらいます。

そもそも、「依願退職の際は、退職願と退職届どちらを提出してもらえばよいのか」と疑問に思っている方もいるかもしれません。どちらも社員が退職を申し出る際に提出するものですが、退職に企業の了承を必要とするか否かが異なります。

退職願いと退職届けの違い

依願退職は企業の了承を得て成立する退職方法なので、退職願を提出してもらうのが一般的です。

退職願の提出期限は企業によって異なり、基本的には就業規則に則ることになります。多くの場合、「退職日の1か月前まで」などと定められているため、事前に確認して社員に具体的な提出期限を伝えておくようにしましょう。

3.退職願の内容確認と業務の引き継ぎ要請を行う

退職願を受理したら退職日や退職理由に目を通します。退職理由の内容次第で退職金や失業保険の手続きが変わることもあるため、社員と企業の認識に相違がないことを確認しましょう。

くわえて、速やかに業務を引き継ぐよう要請することも重要です。後任者が未定の場合は、引き継ぎ用の資料やマニュアルの作成、業務の進捗状況の確認・共有などを依頼しましょう。

4.書類を作成し返却物を受け取る

次に、退職する社員に渡す書類(雇用保険被保険者証や源泉徴収票など)を作成します。社員の転職先が決まっている場合は、退職証明書の作成を依頼されることもあるので確認しておきましょう。

なお、退職証明書については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。

退職証明書とは?離職票との違いや基本的な作成方法、テンプレート例をご紹介 

最後に、健康保険証や貸与品(PCやスマートフォン、ユニフォームなど)、業務で使用するデータなど、退職時に社員から返却してもらうものがあれば共有し受け取ります。

気になる疑問!依願退職の申し出を拒否することはできる?

「依願退職の申し出を拒否できるのか」と疑問に思っている企業もあるのではないでしょうか。

民法第627条「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる」の規定どおり、社員が退職を希望する場合、企業は原則として拒否することはできません。ただし、無期雇用と有期雇用の場合では扱いが異なります。

無期雇用の社員からの退職願・退職届の受理を企業が拒否しても、メールや特定記録などで退職の申し出が伝わったと証明できれば、退職の効果は有効となります。

一方、有期雇用の社員の場合は、やむを得ない理由がない限り雇用契約期間中の退職は不可能です。ただし、雇用契約が「1年を超える雇用契約」で「契約期間の初日から1年が経過した日以後」に退職を申し出た場合は、退職することが可能です。

参照:参照条文等|厚生労働省 / 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)|e-GOV 法令検

まとめ

依願退職とは、社員が退職の意思を表明し、企業が承諾することで成立する退職方法のことです。社員から依願退職の申し出を受けた際の対応は決まっており、たとえば有休に関しては条件を満たしていれば取得できるようにする必要があります。

企業の人事担当者であれば、依願退職について理解を深めることはマストです。社員から依願退職の申し出を受けた際に焦らず正確に対応できるよう、今回ご紹介した内容を覚えておきましょう。

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この記事の著者

寛之大内