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メンバーシップ型雇用のメリット・デメリットとは?ジョブ型雇用との違いと欧米で普及した背景

リモートワークの普及などにより働き方が変わりつつある今、自社の雇用形態を見直したい場合は、まず従来の雇用形態「メンバーシップ型雇用」について理解を深めることが大切です。

そこで今回は、メンバーシップ型雇用の概要とメリット・デメリットについて詳しくご紹介します。あわせて、メンバーシップ型雇用の対照となる「ジョブ型雇用」についても解説しているので、ぜひご参考にしてください。

人材を総合職として採用!メンバーシップ型雇用とは

メンバーシップ型雇用とは、終身雇用を前提とされる総合職として人材を雇用する、新卒一括採用型雇用(日本型雇用)のことです。具体的には「職種を絞らずに新たな人材を引き入れ、その後の職務や勤務地、労働時間に関しては企業の指示で決まる」という雇用形態を指します。転勤や部署異動、ジョブローテーションを繰り返し、長期的に自社を支える人材へと育成するのが特徴です。

メンバーシップ型雇用が普及した背景

日本においてメンバーシップ型雇用が普及し始めた時期は、戦後の高度経済成長期(1955〜1973年)といわれています。この当時、経済の成長を図るには「ひとつの企業で多くの人材を採用し、長期的に育成するシステムが適切」と考えられていました。今よりも技術の進歩が穏やかで、競合他社も少なかったため、人材の流動性が低くてもさほど問題なかったのです。
これにより、「労働者は定年まで働ける環境を手に入れ、企業は長期的な経済成長を実現する」というメンバーシップ型雇用の仕組みが普及したと考えられます。

理解しておこう!メンバーシップ型雇用のメリット・デメリット

では、メンバーシップ型雇用にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

メンバーシップ型雇用のメリット

メンバーシップ型雇用のメリットには、まず「柔軟な人材配置・異動ができる」という点が挙げられます。特定の職種に対して人材を募集・採用しているわけではないので、たとえば一部の業務で欠員が出たとしても、ほかの業務に携わっている社員を異動させて迅速に対応することができます。
これは言い換えれば、業務の有無を問わず社員を雇用し続けるということになるため、労働者にとっては「解雇される心配がない」というメリットにつながります。

このほか、「企業・部署としてのチームワークが強化される」というメリットもあります。
長期間、ひとつの企業・組織で働き続ける労働者が多くなると、企業や部署のチームワークが高まりやすくなります。社員同士の関係性が構築されるため、それぞれの知識やスキルを共有・カバーしながら業務を進めることが可能です。

「忠誠心の高い社員を育成できる」という点も、メンバーシップ型雇用のメリットのひとつです。終身雇用や年功序列を通して将来の安定を約束できるため、会社に尽くす社員に育ちやすくなります。

メンバーシップ型雇用のデメリット

メンバーシップ型雇用のデメリットには、まず「特定の分野のプロフェッショナルが育ちづらい」という点が挙げられます。メンバーシップ型雇用において、社員は部署やチームの異動を繰り返し、複数の業務に就くのが基本です。そのため、専門的な知識やスキルを身につけて、さらにそれを熟練させることは極めて困難といえるでしょう。

このほか、「社員の生産性が低くなる可能性がある」というデメリットもあります。
終身雇用・年功序列などの制度がある以上、社員を容易に解雇することはできません。これは言い換えれば、企業の成長に貢献するような成果を出さなくても、社員は安定した給与をもらえるということです。これにより、モチベーションが低下し、生産性が下がる社員が出てくる可能性があるのが課題となります。

「成果に応じた給与を支払いづらい」という点も、メンバーシップ型雇用のデメリットです。同じ企業に長く勤務するだけで昇給できるため、給与に成果は反映しづらいといえます。

欧米で主流となっている雇用形態!ジョブ型雇用とは

メンバーシップ型雇用と対照的な雇用形態に「ジョブ型雇用」があります。メンバーシップ型雇用をより深く理解するためにも、あわせて押さえておきましょう。

ジョブ型雇用とは、ジョブディスクリプション(職種・業務内容・勤務地・労働時間など)を明確に定めた上で人材を雇用する、欧米で主流の雇用形態のこと。メンバーシップ型雇用とは異なり、採用した人材を異動・転勤させることは基本的にありません。

ジョブ型雇用のメリットには、たとえば「特定の分野のプロフェッショナルを育成できる」という点が挙げられます。着手する業務の範囲が定められているため、社員一人ひとりの負担が軽減し、自らの業務に集中しやすくなります。これにより、担当業務の専門性を高めることができます。

一方でデメリットには、「企業の都合による転勤や配置転換が困難」という点が挙げられます。ジョブ型雇用には「事前に指定した業務以外への転勤・配置転換は不可能」という制限があります。そのため、容易に転勤・配置転換を行えず、場合によっては引き受け手のいない業務が発生する可能性が考えられます。

なお、ジョブ型雇用に関連するテーマに「高度人材採用」があります。
ジョブ型雇用を軸に“自社の業務に必要な能力を備えている人材”を雇用するには、高度人材、たとえば専門性の高い大学院修了者を採用するのも一案です。自社にマッチする大学院修了者を採用するための手法などについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。

高度人材を求める企業が大学院修了者を採用する価値と採用手法【採用賢者に聞く 第10回】

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違い

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違いは、以下の表にまとめています。

 メンバーシップ型雇用ジョブ型雇用
業務内容総合的であり曖昧明確であり限定的
求められる能力多分野における総合的な知識・スキルひとつの分野に特化した知識・スキル
労働契約企業に依存仕事に依存
キャリア異動や昇進を経てキャリアアップ専門性の向上によりキャリアアップ
給与年齢や勤務年数に依存能力に依存
教育企業のサポートを得て学ぶ自ら学ぶのが基本

メンバーシップ型雇用が崩壊?!これからはジョブ型雇用の時代

これからの時代は、ジョブ型雇用が主流になるといわれています。なぜなら、メンバーシップ型雇用は今の時代に合わないと考えられているからです。

その理由として、まず挙げられるのは「日本の生産年齢人口が減少傾向にあること」です。
15〜64歳の生産年齢人口は、1995年ごろをピークに減少の一途を辿っています。2020年には7,406万人となり、2030年には6,875万人、そして2065年には4,529万人にまで減少すると予測されています。また、日本は少子高齢化が進んでおり、若年者人口が大幅に減っています。

この状況の中、メンバーシップ型雇用で新卒一括採用をしていては、人材を効率よく確保できません。その結果、企業として生産性の向上を図ることも難しくなるでしょう。
こうした背景から、メンバーシップ型雇用は今の時代には適さないと考えられているのです。

くわえて、昨今は新型コロナウイルス感染症の拡大により、リモートワークが普及しています。メンバーシップ型雇用の場合、社員の評価は成果だけでなく、企業への貢献度・忠誠心などを含めた上司の主観に基づいて決まる傾向もあります。そのため、業務中の態度や実際の業務内容を確認しづらいリモートワークにおいてはマネジメントが難しく、社員を正しく評価するのが困難になるのです。この点からも、メンバーシップ型雇用は今の時代には合わないと考えられるでしょう。

上述した理由により、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ移行すべきという考え方が広がりつつあります。しかし、必ずしもジョブ型雇用がよいとは限りません。それぞれのメリット・デメリットや時代との相性を踏まえた上で、自社に合った雇用形態を選ぶことが大切です。

参照:人口減少と少子高齢化|内閣府
   参考資料1 日本の少子高齢化はどのように進んでいるのか|財務省

まとめ

メンバーシップ型雇用は、終身雇用を前提に総合職として人材を雇用する、日本独自の雇用形態です。「柔軟な人材配置・異動ができる」「企業・部署としてのチームワークが強化される」といったメリットがあるものの、生産年齢人口が減少傾向にあると同時にリモートワークが普及している現代には、あまり適していないと考えられています。

とはいえ、中にはメンバーシップ型雇用がマッチする企業もあるので、まずはメリット・デメリットを理解した上で、自社に合っているかどうかを確認してみましょう。そうすれば、最終的に最適な雇用形態を導けるはずです。

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この記事の著者

寛之大内