アサーションの必要性・メリット、トレーニング方法を紹介!自他尊重のコミュニケーションを実現しよう

「職場で良好な人間関係を築きたい」「クライアントと円滑なコミュニケーションを取りたい」などとお悩みの方は、自他尊重のコミュニケーションを実現できる「アサーション」を身につけるとよいかもしれません。
今回は、アサーションの概要・必要性とともに、身につけるメリットについて解説します。あわせて、アサーションを身につける方法もご紹介しているので、ぜひご参考にしてください。
円滑なコミュニケーションを実現!アサーションとは
アサーション(assertion)は「断言」「断定」「主張」を意味する英単語です。そこから転じて、ビジネスでは「相互の関係性に重きを置いた、自他尊重のコミュニケーションスキル」を指します。
アサーションの考え方は、1950年代のアメリカで誕生したといわれています。具体的には、心理療法のひとつである「行動療法」の中で提唱されたのが始まりだそうです。
その後、10~20年経ったころにアメリカにて、黒人や女性の人権拡張・差別撤廃を主張する人権運動が活発化。その中で、権利や言動を抑圧されてきた人々が正しく自己主張する方法として、アサーションはさらなる発展を遂げたのです。そして、最終的には「相手を傷つけず、なおかつしっかり主張する」というコミュニケーションの定義に変化し定着しました。
なお、アサーションの考え方が日本に持ち込まれたのは、1980年以降といわれています。
なぜ注目されている?アサーションの必要性

では、アサーションはなぜ注目されているのでしょうか。その必要性にはどのような点が挙げられるのでしょうか。以下にて詳しく解説します。
良好な人間関係を築ける
厚生労働省が発表した「令和2年上半期雇用動向調査結果の概況」によると、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」を挙げている転職入職者は、男性が9.0%、女性が12.5%という結果になっています。数ある理由の中でも上位に位置していることから、多くの人材が人間関係に悩み退職していることがわかります。
この背景を受け、こまめに面談をしたりランチ会を実施したりと、人間関係の改善を目的としたイベントを行う企業もあります。しかし、それでは根本的な改善には至らないことがほとんどです。
そこで着目すべきなのが、コミュニケーションそのもの。コミュニケーションは日常的に行われるため、そこを改善しつつアサーションの概念を取り入れれば、良好な人間関係を構築しやすくなると考えられます。この点から、ビジネスにおいて良好な人間関係を築くため、アサーションの必要性が高まっているのです。
営業・交渉をスムーズに行える
自己主張が苦手だと、クライアントやお客さまに要求を上手く通せないこともあるかもしれません。
このときアサーションを身につけていれば、営業や交渉をスムーズに行えるようになります。また、自分の意見や要求を主張しつつ相手に寄り添うこともできるため、要求を通しやすくなるでしょう。
ビジネスにおいて、クライアントやお客さまと円滑にコミュニケーションを取ることは必須です。そのため、アサーションに注目が集まっていると考えられます。
グローバル化に対応できる
グローバル化に伴い、国内の人はもちろん、国外の人ともやりとりしなければならない場面が増加しました。しかし日本人はその特性上、コミュニケーションを取る上で遠慮してしまうことが多いため、自分の意見を主張できなかったり要求を通せなかったりすることも。これでは、グローバル化したビジネスにおいて自らの仕事を遂行するのが困難となってしまいます。
そこで、この問題を解決する方法としてアサーションに注目が集まっています。具体的には、アサーションを身につけることで、自分の要求を伝えつつ相手の意見にも耳を傾けられるようになるのです。これにより、国内・国外を問わず誰とでも円滑なコミュニケーションを実現できます。
押さえておこう!アサーションを身につけるメリット
アサーションを身につけると、以下の2つのメリットを得られます。
1.仕事のパフォーマンスが上がる
ビジネスにおいて、「自分の意見をなかなか伝えられない」「意見を伝えたいあまり、つい攻撃的な言葉を使ってしまう」というケースは珍しくありません。しかしこの場合、相手が防衛反応を示して、うまくコミュニケーションを取れないことがあります。また、仕事を人に任せられずひとりで抱え込んでしまう可能性もゼロではありません。
アサーションを身につければ、自分の意見を円滑に伝えられるほか、相手も応えてくれるようになります。その結果、仕事がスムーズに進み、パフォーマンスが向上しやすくなるでしょう。
2.コミュニケーションによるストレスが軽減する
自らの意思(とくに「NO」の意思)を主張できないことは、不満やストレスにつながります。複数人で関係性を構築しているビジネスでは、このストレスを自らコントロールするのは困難です。
しかしアサーションを身につければ、相手の心に寄り添いながら自分の意見をしっかり伝えられることができます。これにより「言いたいことが伝わらない」「遠慮してしまう」などのコミュニケーションのストレスが軽減しやすくなるのです。
トレーニングしてみよう!アサーションを身につける方法

では、実際にアサーションを身につけるにはどうすればよいのでしょうか。以下で具体的なトレーニング方法をご紹介するので、ぜひご参考にしてください。
主語を「私」にする
まずは、自分の意思を主張にするときに「私」を主語するよう心掛けましょう。
もし「あなた」を主語にすると、相手を責めているような言い回しになってしまう可能性があり、その場合は主張が上手く伝わらないことも。また、コミュニケーションの相手を主語にすると、相手は詰め寄られている・責められていると感じてしまいやすくなります。
その点、「~してもらえると助かる」などと自分を主語にすれば、必然的に相手を責め立てない言い回しになるほか、自分の意思もしっかり伝えることができます。
自分の意思を正しく認識し伝える
アサーションを身につけるには自分の意思を正しく認識する必要があり、そこで役立つのが物事の受け取り方と流れを見える化した「ABCDE理論」です。
A:Activating event 出来事や現象
B:Belief 感じ方・受け取り方、または思い込み
A:Activating event | 出来事や現象 |
B:Belief | 感じ方・受け取り方、または思い込み |
C:Consequence | 結果としての感情や行動、症状 |
D:Dispute | 非合理的なBに対する反論 |
E:Effect | Dによる効果 |
これを意識すれば自分の意思を深く理解でき、円滑なコミュニケーションを取れるようになります。
このほか、アサーションでは認識した自分の意思をはっきりと伝えることも重要です。このとき、物事を上手に伝える方法である「DESC法」が役立ちます。
D:Describe 自らの状況や相手の行動を客観的に捉え、事実を正しく伝える
E:Ex
D:Describe | 自らの状況や相手の行動を客観的に捉え、事実を正しく伝える |
E:Explanation | 相手に配慮しながら、自らの意思や感情を表現・説明する |
S:Specify | 相手の要求に対する解決策・代替案を、具体的かつ現実的に提案する |
C:Choose | 相手の反応や最終的な選択をもとに、自分の行動を選び伝える |
自分の意思を4段階で分析することで、より具体的に主張できるようになります。
「否定」ではなく「提案」を心掛ける
アサーションを身につける方法には、「否定」ではなく「提案」を心掛けることも挙げられます。
たとえば、上司から仕事を頼まれたとき、忙しく余裕がないと断りたくなるでしょう。もちろん、それは決してダメなことではありませんが、すぐに「できません」と拒むのは望ましくりません。なぜなら理由を伝えずに断ると、ただやりたくないだけと自分勝手に思われる可能性があるためです。
円滑なコミュニケーションを取るには、相手の気持ちを考慮した対応を心掛ける必要があります。そのため、否定で終わらせず提案することが重要になるのです。
「こうしてくれたら引き受けられる」と代替案を出せば、相手が疑問感や嫌悪感を抱くことなく納得できるようになるため、結果として円滑なコミュニケーションを実現することができます。
まとめ
社内・社外を問わず、コミュニケーションの取り方や人間関係にお悩みの方は「アサーション」に目を向けてみましょう。このスキルを身につければ、相互の関係性に重きを置いた自他尊重のコミュニケーションを実現できるため、先に述べた悩みを解消しやすくなります。
今回ご紹介した「アサーションを身につける方法」をご参考に、ぜひアサーションを習得してみてください。
▼この記事を読んだ人は以下の記事も読んでいます
・コミュニケーションのルール化がコツ?「パワハラ防止法」対策で実施したい4つのセオリー【識者に聞く 第六回】
・部下が退職する理由は?退職を防ぐ取り組みと退職を検討してる部下の3つの兆候
・コーピングで社員をストレスフリーに!主な種類と促進方法を徹底解説