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雇用契約の定義と具体的な結び方をご紹介!労働契約や業務委託契約との違い

雇用契約を結ぶ際に、トラブルは避けたいもの。その願いを叶えるには、大前提として雇用契約を正しく理解する必要があります。

そこで今回は、雇用契約の基本情報とともに、その結び方について解説します。あわせて、雇用契約書を作成する際のポイントもご紹介しているので、ぜひご参考にしてください。

正しく理解しよう!雇用契約とは

雇用契約とは、雇用に関する契約のことです。民法第623条では以下のように定義されています。

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。  
引用:明治二十九年法律第八十九号 民法|e-Gov 法令検索

つまり、労働者は報酬をもらう代わりに仕事を行うこと、そして雇用主は仕事をしてもらう代わりに報酬を与えることを、それぞれ公的に約束することこそが「雇用」なのです。

なお、雇用契約を取り交わすには、まず雇用主側が労働者に「雇用契約書」を提示する必要があります。その内容を労働者に確認してもらい、合意の上で署名・捺印してもらえば契約完了です。

相違点はある?雇用契約と労働契約・業務委託契約の違い

では、雇用契約と労働契約・業務委託契約はどう違うのでしょうか。

雇用契約と労働契約の違い

上述のとおり、雇用契約は「雇用に関する契約(民法第623条)」です。これに対し、労働契約は「労働に関する契約(労働契約法第6条)」を指します。

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
引用:平成十九年法律第百二十八号 労働契約法|e-Gov 法令検索

労働契約法では、労働者を「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者(※1)」と定義。さらに、民法第623条で定義されている雇用契約の「労働に従事する者」と同義と明記しています。そして使用者については、労働契約の締結当事者(使用する労働者に賃金を支払う者)と定義しています。この点から、雇用契約と労働契約はほぼ同義であり、大きな違いはないことがわかります。

ただし、法律の観点では「労働者」の範囲に少し違いがあります。
雇用契約における労働者は「労働に従事するすべての人」と定義されていますが、労働契約における労働者は使用従属関係が認められるかどうかで変わってくるのです。また、「同居の親族のみを使用する業務」については労働者から除外されます。

参照:平成十九年法律第百二十八号 労働契約法|e-Gov 法令検索

   雇用契約と労働契約|和田 肇(名古屋大学教授)

参照・引用(※1):労働契約法のあまし|厚生労働省

雇用契約と業務委託契約の違い

民法には、雇用契約のほか「請負契約」や「準委任契約」など、いわば業務委託契約もあります。

あります。

請負契約 (民法第632条)請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
準委任契約 (民法第656条)この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

引用:明治二十九年法律第八十九号 民法|e-Gov 法令検索

雇用契約の場合、労働に従事した者は「労働者」として労働法上の保護を受けられます。しかし、業務委託契約の場合は労働に従事した者が「事業主」扱いとなるため、労働者として保護を受けることはできません。この点が、雇用契約と業務委託契約の大きな違いといえます。

具体的にどう対応すべき?雇用契約の結び方

雇用契約は、以下の手順を踏むことで結ぶことができます。

1.雇用契約書・労働条件通知書を交付する

雇用契約を結ぶ際は、まず「雇用契約書」と「労働条件通知書」を用意し交付する必要があります。

雇用契約書

雇用契約書とは、民法第623条に基づいて雇用主と労働者が契約を交わしたことを証明する書類です。法律上、書面での交付は義務付けられていないため、発行せずとも契約は成立します。ただし、雇用後の労働に関するトラブルを避けるためには、書類で取り交わしておくのが堅実です。

労働条件通知書

労働条件通知書とは、労働契約の期間や始業・終業時刻、勤務時間、賃金など労働条件に係る事項を記載した書類です。このほか、業務内容や休日・休暇、解雇・退職に関する内容も明示が必須です。
雇用契約書とは異なり、労働基準法第15条に基づき労働者へ必ず交付する必要があり、その対象は正社員に限らず、アルバイトやパート、派遣社員も該当します。

参参照:昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法|e-Gov 法令検索

2.労働者から必要書類を回収する

雇用契約書・労働条件通知書を交付したら、次に労働者から雇用保険被保険者証や年金手帳、住民票、マイナンバーなどを回収します。労働者を中途採用した場合は、源泉徴収票や健康診断書の回収も必須です。これらは雇用契約を結ぶ上で必要な書類なので、漏れがないよう十分注意しましょう。

3.労働者の保険・税金に関する手続きを行う

労働者から必要書類を回収したら、社会保険と雇用保険、住民税、所得税の手続きを行います。

採用した労働者(正社員)が70歳未満の場合は、雇用開始日から5日以内に健康保険・厚生年金被保険者資格取得届を年金事務所に提出します。
一方、採用した労働者が契約社員やパート・アルバイトの場合は、「契約期間が2か月以上」「一週間の所定労働時間・1か月の所定労働日数が一般社員の75%以上」という2つの条件を満たしているケースに限り、同じ手続きが必要です。

31日以上の雇用が見込める労働者で、所定労働時間が週20時間以上の場合は、雇用保険に加入する必要があります。雇用契約を結んだ月の翌月10日までに、雇用を証明できる書類とともに雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出しましょう。

住民税と所得税に関しては給与から天引きできるので、場合によっては手続きが不要なこともあります。ただし、転職したその年に再就職した労働者に関しては、以前勤めていた職場の源泉徴収票を提出してもらう必要があるので、忘れないよう注意しましょう。

4.法定三帳簿を作成する

保険・税金に関する手続きと一緒に、法定三帳簿の作成も進めておくことが大切です。

法定三帳簿とは、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿のこと。これらは企業で作成し保管することが義務付けられており、その期間は労働者名簿が労働者の退職・解雇・死亡の日から3年、賃金台帳が労働者の最後の賃金を記入した日から3年、出勤簿が労働者の最後の出勤日から3年となっています。

労働者名簿労働者の氏名や住所、生年月日、雇入れ年月日、従事業務などを記載
賃金台帳労働者の氏名や住所、賃金計算期間、労働時間数などを記載
出勤簿労働者の氏名のほか、出勤簿やタイムレコーダーの記録などを記載

参照:労働者を雇用したら帳簿などを整えましょう~労働関係法令上の帳簿等の種類と保存期間について(簡易版)~|厚生労働省

要注意!雇用契約書を作成する際のポイント

雇用契約書を作成する際は、あらかじめ「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」について理解しておく必要があります。

【明記必須】絶対的明示事項

労働基準法第15条により、労働者に対して労働条件を明示することが義務づけられています。そのため、雇用契約書を作成する際は以下の「絶対的明示事項」を必ず明記しなければなりません。

・労働契約の期間と契約を更新する場合の基準について
・就業場所と業務内容、始業・終業時刻、休憩時間、残業の有無、休日・休暇について
・給与の計算方法や締め日・支払日、支払方法について
・退職について

【必要に応じて明記】相対的明示事項

特別なルールがあったり必要性が高かったりする場合は、相対的明示事項も明記しましょう。

【例】
・退職金が支払われる労働者の範囲をはじめ、退職金の計算方法や支払方法、支払時期について
・臨時的に支払われる賃金や賞与について
・安全および衛生について

必ずしもすべてを明記する必要はありませんが、どのような契約を結んだか一目でわかる状態にしておくことは、労働者とのトラブルを防止する上で大いに有効です。そのため、もしもに備えて書面に残しておくことをおすすめします。

まとめ

雇用契約には法律が大きく関与していることから、締結する上でややこしさを感じることもあるかもしれません。しかし、新たに仲間入りする人材とトラブルなく雇用契約を結ぶには、必要不可欠な知識といえます。そのため、今回ご紹介した内容は忘れず覚えておくようにしましょう。

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この記事の著者

寛之大内