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キャリアパス制度の目的・意味とは?企業にとってのメリットと導入手順

「キャリアパス制度」を導入すると、企業が抱えるさまざまな課題を解消できる可能性があります。

そこで今回は、キャリアパス制度の概要や目的、効果について解説します。あわせて、キャリアパス制度の導入手順もご紹介しているので、ぜひご参考にしてください。

多くの企業が導入?!キャリアパス制度とは

まずは、キャリアパスの言葉の意味とキャリアパス制度について理解を深めましょう。

キャリアパスとは、目標とするキャリアを目指すための「道筋」のことです。具体的には、目標のキャリアを目指す上で必要な経験やステップを積む順序のことを指します。
似たような言葉に「キャリアプラン」がありますが、これら2つは目的がまったく異なります。キャリアパスが「自らが勤務する企業での昇進・昇格」を目的としているのに対し、キャリアプランは「人生における目標の立案・達成」を目的として掲げています。

キャリアパス制度とは、上述したキャリアパスの目的から転じて、企業内での昇進・昇給における確かな基準を設けた人事制度のことを指します。さまざまな効果が期待できることから、昨今導入する企業が増えつつあります。

主に2つある!キャリアパス制度を導入する目的

キャリアパス制度を導入する目的には、以下の2つが挙げられます。

1.多様な働き方への対応

これまでは、年功序列・終身雇用制度により年齢とともに昇進や昇給が行われていました。しかし昨今は、自分自身でキャリアを作る意識の向上によって働き方が多様化しつつあり、それに伴い転職を視野に入れる労働者が増えています。つまり、「ひとつの企業で定年まで勤務しキャリアを積む」という考え方は減少傾向にあるのです。

こうした状況下で、社員一人ひとりが目標とするキャリアを定め、それ踏まえて企業が目指すべき道筋を明らかにすれば(=キャリアパス制度)、働き方の多様化に適応しやすくなります。さらには、社員のモチベーションを高める効果も期待できます。

2.人材不足の解消

少子高齢化により、現在多くの企業で労働力となる年齢層が足りていません。具体的には中核となる人材が定年退職する一方で、新しい人材の確保が円滑に進まないケースが頻出しているのです。
実際に、総務省統計局が発表した「労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均結果」によると、2020年の労働力人口の平均は6,868万人。これは前年に比べて18万人も減少した人口数です。

この状況下で企業が人材不足を解消するには、社員一人ひとりのパフォーマンスを高めることが欠かせません。そこで有効なのがキャリアパス制度であり、それぞれの社員に沿った「目指すべき道筋」を明らかにすることで、社員のモチベーションを引き上げることができます。社員のモチベーションが高まれば仕事のパフォーマンスも上がるので、結果的に人材不足を解消しやすくなるのです。
くわえて、キャリアパス制度の導入を明示すれば、それは新卒・中途における新たな人材へのアピールにもなり得ます

参照:労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均結果|総務省統計局

うれしいメリット盛りだくさん!キャリアパス制度の効果

では、キャリアパス制度を導入した場合、どのような効果を得られるのでしょうか。以下で代表的な4つの効果を解説します。

社員のモチベーションを向上できる

キャリアパス制度を導入した場合、どのスキルを身につけて成果を出せばよいのか明確になります。また、昇進や昇格の基準を社員が理解できるようになることも、考えられる影響のひとつです。
これらにより、社員は「どのような働き方を実現すれば評価を得られるのか(目標とするキャリアを目指せるのか)」を理解した上で行動できるため、結果的にモチベーションの向上が期待できます。

優秀な人材を確保しやすくなる

キャリアパス制度を導入し、その事実を明示すれば、応募者が「入社後のキャリアアップの道」をイメージしやすくなります。これは、応募者の将来に対する不安を取り除くことにつながるため、結果として優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。
また、キャリアパス制度の導入は離職率の低下にもつながります。応募者のみならず既存社員の不安も払拭できるため、今いる優秀な人材を逃さず確保し続けやすくなるのです。

入社後のミスマッチを防止できる

キャリアパス制度の導入を明示した場合、応募者に自社での働き方を前もってイメージしてもらうことができます。これは言い換えれば、入社後に「イメージと違った」と思われる可能性を最小限に抑えられるということ。つまり、入社後のミスマッチを防止できるほか、採用後の定着率の向上を図ることができるのです。

自社の業績を高められる

上述したキャリアパス制度の効果のうち、「社員のモチベーションアップ」「優秀な人材の確保」の2つによって、社員の生産性の向上が期待できます。これにより企業全体における業務のレベルがアップすれば、結果的に業績が上がる可能性があるのです。
さらに、業績が上がれば企業の知名度が向上することが考えられるため、次なる優秀な人材の確保もしやすくなるでしょう。

ぜひご参考に!キャリアパス制度の導入手順

キャリアパス制度を実際に導入する際は、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。以下で、基本的な導入手順をご紹介するので、ぜひご参考にしてください。

1.最終的なゴールを決める

まず着手すべきなのは、最終的なゴールを決めることです。もしゴールを決めないままだと、キャリアパス制度を実施する意義が不明瞭になり、名ばかりの取り組みになってしまいます。
企業にとっても社員にとっても有意義な取り組みにするために、まずは「そもそも、なぜキャリアパス制度を導入する必要があるのか」を明確にしましょう。具体的には、「企業と人材におけるキャリアのミスマッチによる退職を防ぎたい」といった例が挙げられます。

2.社内の体制を整える

最終的なゴールを明確にしたら、次は必要に応じて社内の体制を整えます。たとえば、公平な評価制度を設けたり、評価に応じた待遇制度を整備したりするのがおすすめです。このほか、社員一人ひとりが順調にキャリアアップできるよう研修を取り入れるのも望ましいといえます。

3.社員と面談し具体的な施策を実施する

ゴールの設定・社内体制の整備まで終えたら面談を実施し、社員が具体的にどのようなキャリアプランをイメージしているのかヒヤリングします。このとき、ポイントとしては企業としての要望を押し付けないことが大切です。企業が考えたキャリアパスが社員にとってベストとは限らないため、相手の気持ちを尊重しつつ、お互いの認識を擦り合わせましょう。
そして面談を終えたら、ヒヤリングした内容(社員が描くキャリアプラン)と企業の都合を加味して配置転換を行います。

4.状況に応じて社員をサポートする

配置転換からしばらく経ったら社員の活躍を確認し、状況に応じて手を差し伸べましょう。
とくに問題なく順調に取り組めているようであれば、引き続き見守りながら評価を行います。何か問題があるようなら直ちにサポート・ケアを行い、必要であれば別の施策に変更しましょう。

まとめ

キャリアパス制度は、企業内での昇進・昇給における確かな基準を設けた人事制度です。導入すれば、「社員のモチベーションが低い」「優秀な人材をなかなか採用できない」「ミスマッチによる早期退職が頻出している」といった課題を解消できる可能性があります。心当たりがある企業は、今回ご紹介した導入手順をご参考に、ぜひキャリアパス制度を導入してみてください。

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この記事の著者

寛之大内