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人事におけるリテンションとは?意味や目的、退職を防ぐ5つのリテンション施策

採用競争の激化が続く今、企業にとって必要な人材を確保するには、まず既存社員の離退職を防ぐ必要があります。そこで取り組みたいのが「リテンション」です。 

そこで今回は、リテンションの概要や注目されている背景、目的、重要性について解説します。また、具体的なリテンション施策もご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。 

人事におけるリテンションとは?人事とマーケティングでの意味の違いと注目されている理由

リテンション(retention)は、「維持」「保持」を意味する言葉です。主に人事領域とマーケティング領域で使われ、それぞれで捉え方に違いがあります。特にこの記事では、人事・採用領域におけるリテンションを取り扱っていきます。 

人事領域におけるリテンション

人事領域におけるリテンション(リテンションマネジメント)とは、人材の流出を防ぐための施策のこと。すなわち、既存社員が離退職しないよう対策を講じることを指します。 

優秀な人材が自社を離れることは企業にとって大きな損失であり、代わりとなる人材を採用するにも時間とコストがかかります。そのため、リテンションを通して今いる優秀かつ必要な人材を確保し、採用にかかる時間・経費を最小限に抑えるのです。 

なお、具体的な施策内容には、たとえば「社員待遇の見直し」「教育制度の確立」「社内コミュニケーションの円滑化・活性化」などが挙げられます。 

一緒に知っておきたいマーケティング領域のリテンション

ちなみに、マーケティング領域におけるリテンション(リテンションマーケティング)とは、顧客の流出を防ぐための施策のこと。すなわち、「商品・サービス購入後のアフターフォローの充実」「自社サイトのユーザビリティの見直し」などを通じて、既存顧客と継続的な関係を保つために対策を講じることを指します。 

企業においては、新たに顧客を獲得するよりも、既存顧客を維持するほうが低コストであることがほとんどです。そのため、リテンションに注力することで長期的・安定的な利益を得やすくなるメリットがあるのです。 

マーケティングの知見は人事・採用担当者にとっても有益ですので、気になる方はぜひ一度調べてみてください。 

人事領域でリテンションが注目されている背景

上述した2つのうち、この記事で特に取り上げたいのは人事領域におけるリテンションです。この背景には、主に人材不足人材の流動が大きく関係しています。 

少子高齢化により、日本の労働人口は減少傾向にあります。そのため、企業における採用競争は激化の一途を辿っており、優秀な人材を確保しづらくなっているのです。これは言わば、人材不足に悩む企業が増えつつあるということ。この状況が続けば、企業のさらなる発展は困難になるほか、そこからさらに退職者が出ると日々の業務を遂行することすらできなくなります。 

こうした背景から、多くの企業が「既存社員の定着」に価値を見出し、人事領域におけるリテンションに注力し始めたと考えられています。 

また昨今は、労働者の終身雇用に対する意識が薄れつつあります。スキルアップを図り自らの市場価値を高めるため、転職を視野に入れる労働者が多くなっているのです。 

仮に優秀な既存社員が退職すれば、代わりとなる人材を採用するために時間・コストを捻出する必要が出てきます。さらに、離職率の高い企業とみなされてしまうと、新卒者・転職者から敬遠されてしまう可能性も。こうした事態を避けるため、既存社員の流出を防ぐリテンションに注目が集まっているのです。 

リテンションの目的

人事領域におけるリテンションの目的には、まず優秀な人材の継続的な活躍が挙げられます。 

これを実現するには、単に社員の離退職を防ぐだけでなく、働きやすい社内環境を整えることも大切です。そうすることで、社員に「ここで働けてよかった」と思ってもらいやすくなり、ひいては想像以上の活躍が期待できます。 

このほか、ITに適応した事業発展も目的のひとつです。 

ビジネスにおいてもITやテクノロジーの発展は著しく、今後ほかの企業と差をつけるにはこれらに適応することが欠かせません。そのため、リテンションを強化して優秀な人材を維持し、IT・テクノロジーに関するスキルやノウハウを蓄積させるのです。そうすれば、今の時代に合った事業の発展が見込めます。 

人事におけるリテンションの重要性

人事領域におけるリテンションが重要な理由には、主に以下の5つが挙げられます。 

既存社員の維持 人材不足・人材の流動により、優秀な人材を確保するのは決して容易ではないため、今いる社員をつなぎ止める必要がある。 
コストの削減 既存社員を維持できれば、採用や育成にかかるコストを削減できる。 
社員の向上心の維持 既存社員が「自分は必要とされている」と感じられたら、業務に対する向上心(モチベーション)が高まる可能性がある。 
技術・人脈の流出防止 技術者や管理職の離退職を防ぐことができれば、懸念されがちな技術・人脈の流出も防止できる可能性がある。 
経営の安定化 既存社員を維持できれば、事業計画に沿った経営がしやすくなる。 

退職を防ぐリテンション施策

人事領域におけるリテンションの具体的な施策は、主に以下の5つです。 

1.給与体系・報酬の見直し

前提として、給与が低いことは既存社員の離退職の原因になり得ます。そのため、正当に人事評価する仕組みを整え、成果に見合った報酬を与えるようにすることが大切です。そうすれば、既存社員が企業に対する信頼感を高め、離退職を未然に防ぎやすくなります。 

2.ワーク・ライフ・バランスの実現

出産や育児、介護など、さまざまな事情により柔軟な働き方を求める労働者は決して少なくありません。そのため、副業やリモートワークを許可したり有給休暇を取得しやすくしたりして、ワーク・ライフ・バランスの実現を図ることは、既存社員の離退職を防ぐ上で有効な施策といえます。 

3.スキルアップの支援

自らの成長を感じられない状況は、既存社員が離退職を検討するきっかけのひとつです。とくにスキルアップ・キャリアアップに興味のある人材ほど、その傾向が強いといわれています。 

そのため、既存社員の流出を防ぐには、社内・社外を問わず職種や業種について学べる場を設けることが大切です。こうした成長機会の提供により、既存社員の維持に加え、社員の成長を通じた会社全体の活性化も期待できます。 

4.キャリアアップの支援

昇進を視野に入れた優秀な人材の離退職を防ぐには、キャリアアップを支援する環境を整えることが大切です。具体的には、社内公募制度や社内FA制度を導入したり、研修やセミナーを実施したりするのがベスト。これにより、上述した人材のモチベーションや目標達成意識を高めることができ、離退職を未然に防ぎやすくなります。 

5.社内コミュニケーションの活性化

意思疎通が円滑な企業は、既存社員の定着率が高まりやすいといわれています。そのため、社内コミュニケーションを活性化させて社員同士の信頼関係を強化することも、効果的な施策といえます。 

意見交換の場を設けたり、上司から部下へのフィードバックをこまめに行ったりして、風通しのよい企業の実現を目指しましょう。 

まとめ 

人事領域におけるリテンションは、今いる優秀な人材を維持し、ビジネスにおいて新たなチャンスを生み出すには欠かせない施策といえます。 

「離職率が高い」「経営が不安定」という企業は、ぜひリテンションという概念を念頭に人事施策を一度見直してみてください。そうすれば、時間・コストを削減しつつ事業を軌道に乗せることができるかもしれません。

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この記事の著者

寛之大内