いつまで経っても採用が終わらない…。採用活動が長期化する原因と対策【採用賢者に聞く 第28回】

少子化やコロナウイルスの流行による不景気もあり、就活の早期化は止まるところを知りません。その影響から、一部の人気企業を除く多くの企業(特に中小企業)では、欲しい人材を獲得することができず、採用活動が長期化している傾向にあります。そのため、企業側の採用活動コストは増加し、採用担当者の疲弊も大きくなる一方です。
そこで、今回は採用活動の長期化の原因と対策について、株式会社人材研究所の曽和利光氏に詳しく話を伺いました。
採用活動の長期化が、企業と学生を疲弊させている

採用活動が長期化していると言われています。その実態について教えてください。
ここ数年、新卒採用は年々前倒しになっているにもかかわらず、学生の承諾時期が変わらないことから採用活動は長期化している傾向にあります。
例えば、大学3年生の3月に採用活動をスタートさせ、大学4年の6月に内定を出せば採用活動はたった数ヶ月で終わります。しかし、現在の採用活動は大学3年の3月以前にインターンシップなどで始まることが多く、スタートがとても早くなっています。
加えて、内定承諾者であっても、3割以上の学生が就職活動を継続しているような現状です。(就職みらい研究所 就職プロセス調査(2023年卒)「2022年6月1日時点 内定状況」)長い企業になると1年以上も採用活動をしているということにもなっており、採用担当は頭を悩ませているところだと思います。

学生たちも、就職活動が長期化している実感はあるのでしょうか?
学生たちも不景気への不安から、「少しでも良いところに就職したい」「安定した企業に入りたい」と早めに動き出していますので活動期間は長くなっている傾向です。
特に多くの企業にエントリーをする、就活への意識の高い層の活動期間はとても長いです。彼らは多くの企業へエントリーしますので、オンラインが増えたとはいえ、多くの準備が必要になります。さらに、人気企業は競争率も高いので、不採用が続くこともあります。このような理由から、企業側だけでなく、学生側からしてみても精神的にも肉体的にも疲弊していることが多くなっているようです。
また、理系などの専門職を目指す学生に比べると、総合職を志望する学生たちの方が就職活動が長期化しているという報告もあります。

採用活動の長期化の理由は「学生優位市場」と「採用活動の早期化・オンライン化」
そもそも採用活動が長期化している原因はなんでしょうか?大きな原因は二つあります。
一つは少子化によって学生人口が減少し、「学生優位」となっているということです。つまり、新卒市場で「仕事が余っている」状態が続いているということです。そのため、不景気であるにもかかわらず、求人倍率は高止まりになります。つまり、仕事に対して必要な人材を獲得できず、人を探し続けるしかないという状況が生まれているというわけです。そう言った状況を考えると、採用活動が長期化するのは「至って当然のこと」と言えるでしょう。
そしてもうひとつは、採用活動が早期化していることです。就職みらい研究所の就職プロセス調査(2023年卒)「2022年6月1日時点 内定状況」によると、23年卒の内定率は6月1日時点で73.1%と昨年より約5ポイント上昇しており、約2週間程度の早期化傾向が見られます。
一般的に3年生の3月に企業の採用情報は解禁、4年生の6月に面接を開始する流れになっているものの、外資系企業やメガベンチャーなどでは先行して説明会や選考を実施しているのが実態です。内定直結型のインターンシップも増え、人気企業は多くの候補者の中から選ぶことができていますが、認知度の低い企業は候補者を確保するのにも苦労している状況となっています。
どの企業も、優秀な学生を必要な人数欲しいわけですから、流れに乗り遅れるわけにはいかないと焦ってしまうんでしょうね。だからこそ、今後も、こういった傾向は続くと考えられます。
新型コロナウイルスの流行により、採用活動のオンライン化が進んだ影響もあるのでしょうか?
採用活動のオンライン化によって、学生がプレエントリーしやすい状況が生まれ、受験数が増加している影響も大きいと考えます。
データを見てみると、23年卒は一人当たりの受験者数が11.07社。21年卒は対面+WEBで平均5.84社でしたので、約1.89倍に増加しています。(就職みらい研究所 就職プロセス調査(2023年卒)「2021年5月15日時点 内定状況」より)つまり一人の学生が多くの企業にアプローチしているわけです。
企業側から見ると、自社の求人に対して多くの応募があるわけですから、一見良いことのように感じるかもしれません。しかし、空前の学生優位の市場では「最後に選ぶのは学生」です。一人の学生が複数の内定をもらい、その中から一番良いところを選択するため、当然、辞退する人も増えます。
実際に2023年卒の辞退率は、5月15日時点で昨年よりも2.8ポイントも上昇しています。多くの学生にリーチしたものの、内定には結びつきにくくなっているのが分かります。企業側にしてみると、「良い人を見つけた」と思っていたのに逃げられてしまう「ぬかよろこび市場」になっているのです。
その結果、中小企業では早期からコストをかけて採用活動をしても、必要な人材を獲得することができず、結局はずるずると採用活動を継続するしかなくなるというわけです。
オーディション型からスカウト型へ。採用活動の常識を変える

このような状況の中で、より効率的に採用活動を行うためには、どのような対策が有効だと考えますか?
これまでの採用活動への常識を一度捨て、「今」ならではの採用活動に切り替えていくことが大切です。
ひとつは、希望者を集める「オーディション型」の採用活動だけでなく、採用担当者が積極的に学生に会いにいく「スカウト型」の採用活動を行うことです。
そもそも学生の数が少ないわけですから、待っているだけでは必要な母数が獲得できなくても当然です。だったらオンライン・オフライン問わず、「採用したい学生を迎えにいく」くらいの気持ちで動いていきましょう。
そのためには「自社が求める人物像」を改めて考え、ターゲットを明確にしておくことが必要です。その上でスカウトサービスの利用や、前年度採用した新入社員の後輩など、人柄をよく知っている人物にアタックしてみるのも効果的な方法と言えるでしょう。
スカウト型の採用は手間がかかりますが、確実に「欲しい人」にアプローチできることがメリットです。オーディション型に比べると、採用担当者の熱意が結果に影響しやすいので、やりがいもあると思います。
採用活動の開始時期についてはどうでしょうか?
個人的な見解ではありますが、あえて早期からの採用活動をやめてみるのも一つの手ではないかと考えています。採用担当者としての経験が長くなればなるほど、「こうであるべき」と考えてしまいがちです。しかし、「これまでの常識」だけが正しいとは限りません。
例えば、早期の活動に参加する学生は、人気企業・大企業を志望している場合が多いでしょう。そういった意識を持つ学生たちに対して、知名度が低い企業がアプローチしても無駄な労力となってしまうケースは少なくありません。
そうであれば、人気企業・大企業の採用活動が落ち着いた時期、つまり6〜7月頃から、採用活動をスタートしてみてはいかがでしょうか。学生たちもその頃には一通りの経験をしていますので、自分のことについてしっかり理解できていることが多く、より安定した採用に繋がる可能性もあるでしょう。
「優秀な人材」ではなく「自社に合う人材」を

最後に、悩める採用担当へアドバイスをお願いいたします。
繰り返しになりますが、これまでの採用活動の常識を一旦手放してみてください。
これまで通りの採用活動を行なっていると、一部の人気企業を除いては「多くのエントリーが得られるけれど、採用はできない」という効率の悪い採用活動に陥りがちです。しかし、そこをがむしゃらに変えようとしても、少子化のこの時代、容易なことではありません。だからこそ、その部分に関しては割り切って「欲しい人は自分たちで探し、迎えにいく」という視点を持つことで見えてくるものがあるのではないかと思います。
また、日程調整や面接にかけるリソースを減らし、スピード感を上げるためにも、日程調整ツールや録画面接などを採用するのも良い方法でしょう。その他、AIの活用なども考えられるかもしれません。技術やサービスの活用で、社内のリソースを長期にわたって疲弊させるリスクを軽減できます。
ターゲットを探す場所・時期についての見直しも検討してください。優秀な人材はどこにでもいますし、どの時期にもいます。「優秀」の定義は企業ごとに違うはずですから「優秀な人材を」と考えすぎるのではなく「自社に合う人を」と考え、「自分達らしい採用活動のかたち」を模索していくことが、今後の鍵となっていくのではないかと思います。
世間がこぞって採用活動を早期化・長期化させている今こそが、ある意味チャンスだと思ってください。「自社にとって効果的な採用活動」を行なう勇気を持ってもらえたらと思います。
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本記事では伝えきれない、長期化・早期化の企業側の対策や
効率的な採用活動の考え方などを深堀して動画では説明いただいてます。
採用活動の長期化にお悩みの方はぜひご視聴ください。

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