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【評価基準・人材要件のニューノーマル】採用担当者は学生の何を見て評価するべきか?【採用賢者に聞く 第30回】

学歴フィルターの終焉が話題になるなど、採用担当者が学生を評価する際の「わかりやすい指標」が見直されつつあります。そんな時代に、採用担当者は学生のどんなところを見るべきなのか、どのような部分で評価をするべきなのか?

これからの時代の新しい人材要件や学生を評価する際のポイントについて、アチーブメント株式会社人事部でリーダーを務める山森拓実氏に詳しく解説していただきます。

山森拓実 アチーブメント株式会社
人事部(採用育成 / 労務管理・人事制度運用 / 総務)リーダー

京都大学文学部倫理学科卒業。2015年に新卒でアチーブメント株式会社に入社。入社1年目から人事部 新卒採用担当として活動し、年間1万名の学生と最前線で関わる。その後、自身が企画を担当したサマーインターンが、キャリアパーク調べのインターンシップ人気ランキングにて3年連続1位という結果を残した。2020年~2021年の約2年間は、社長室 商品開発チームにて自社の教育プログラムの開発にも取り組む。現在は人事部にて採用、育成、労務、人事制度、総務を担当。Twitterフォロワー数は28,000名を超え、Twitter経由での内定出しも実現。複数メディアに取り上げられる。

「学歴」だけを見る時代は終わろうとしている。

採用における評価基準や人材要件として、学歴が重視されていたのはどうしてだと思いますか?

私が採用活動に携わるようになった7年前には、すでに「学歴以外の部分」が評価されるような流れになっていたので、実際に学歴が大きな指標であったのはその前のことだと理解しています。

そもそも、なぜ学歴を指標にしていたのか?というと、「応募者が多い」ということに尽きるのではないでしょうか。

採用活動には期限があり、採用できる人数も限られています。そのうえ、人気のある企業では、わずかな採用枠に対して多くの学生が殺到します。そんな中、企業側としては短い時間の中で、自分たちにとって良い人材を採用しなくてはなりません。しかし、その判断をするにも応募者全員と面接する時間は到底取れない状況だったのではないでしょうか。

となると、「面接する人」を絞り込む必要が出てきます。そこで、まずある程度の人数に絞り込むための指標として「学歴」を用いたと考えられます。昨今、「学歴」で判断するのは「よくない」「やめた方がいいのでは?」と否定する人が増えてきているのも事実です。

しかし、いわゆる「学歴が高い人」は難関試験を突破しているわけですから、単純に「学力」だけでなく、「努力」「熱意」などは一定以上の基準に達している確率が高いと考えられます。効率よく良い人材に出会う方法として、一概に「間違いだ」とは言い切れないのではないでしょうか。

では、なぜ採用において学歴を指標とする企業が減ってきたのでしょうか?

今でも学歴を一つの指標としている企業はまだまだあると思います。しかし、「学歴だけ」ではなくなっているのは事実です。これはなぜかと言うと、これまでの採用活動を通して「学歴」=「自社にあった能力を持つ人物」ではないということが分かってきたからだと思います。

例えば弊社の場合、採用活動において学歴を指標にすることはほとんどありません。我々は単純に「勉強ができる人」を求めているのではなく「情熱を持って仕事に取り組む人」が欲しいからです。

こういった部分にフォーカスして採用活動をしていくと、いわゆる「高学歴」ではないところにも「我が社にとって優秀な人材」がたくさんいることが経験則としてわかります。
そういった経験を繰り返していくと、学歴で判断する必要がなくなっていくのだと思います。

もっとも求められるのは、「コミュニケーション能力」

では今、採用において学歴以外で重要視される能力はどのようなものなのでしょうか?

今、多くの企業で求められているのは、「コミュニケーション能力」だと思います。コロナウイルスの流行や気候変動による災害など、現代は予測もしなかったようなことが起きています。そんな中、会社で成果を出していくために大切なのは、「人と協力できる」ということです。

つまり、職場で良い人間関係を築くことができ、取引先と気持ちの良いコミュニケーションを取ることができる、いわゆる「コミュ力の高い人」が重要視されていると思います。

また、自分自身で考えることができる「主体性」、目標に対しての「チャレンジ精神」なども高く評価されている傾向にあります。
このような部分は、面接で質問をしたり、エントリーの際に提出してもらうなど、採用活動の流れの中で引き出していくことが大切だと思います。

図:一般社団法人 日本経済団体連合会「2018 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果

面接など実際のフローで見極めるためには、どんなことをすればよいですか?

コミュニケーション能力は、面接での応対やグループでのワークなどを通して見えてくると思います。また、学生時代に「勉強以外に取り組んでいたこと」について詳しく聞いてみるのも、その学生の「人となり」を知るのには有効な方法だと思います。

例えば、熱心に集団スポーツに取り組んでいた人なら「集団の中で役割を見つけ、目標に向かって努力をする」という経験をしてきた人物が多いはずです。

また、留学したことのある人なら「言語も文化も違うストレスのかかる状況下で、そこに対応できるよう言葉や文化を学びながら、コミュニケーションを図ってきたであろう」人物の可能性が高いですし、アルバイトで接客業に従事していたのなら、「初めて会う人でも臆せず、コミュニケーションを取ろうと努力してきた」可能性が高いと推測されます。

逆に、自分の趣味にのめり込んでいた学生ならば、「一つのことに情熱を持って打ち込むことができる」と評価することもできるでしょう。「その人がどんな人物か」を丁寧に引き出していくことで、より「自社が求める人物」と紐づけることができるようになり、評価しやすくなると思います。

学歴に比べ、学外での活動は評価につながりやすいのでしょうか。

一つ誤解しないで欲しいのは「学歴」で評価することが悪いわけではないと言うことです。

先にもお話したように、「学歴が高い」ということはその人が学んできた証拠であり、努力の結果でもあります。そういった意味で、「学歴」が評価の一つの指標になることを間違っているとは思いません。コツコツ学び続けることは、どの時代においても素晴らしいことに変わりありません。

ただ、人の魅力や能力は、学歴以外の部分にも当然ありますから、学歴の高い人が熱心に勉強してきたように、「熱心にスポーツに取り組んだ人」「学外活動に取り組んできた人」が評価されるのは良いことだと思います。

自社が求める人物像を明確にし、採用活動に役立てる

評価基準・人材要件を実際に落とし込む際、注意すべきなのはどのような点でしょうか?

まず、「自社が求める人物像」を明確にする必要があると思います。

例えば営業マンが欲しいのに、研究者肌の人物を採用するとお互いにとって良い結果は生まれません。それはその人自身が「優秀かどうか」にはあまり関係がなく、適性の問題だと思います。

営業マンなら、「一つのことにコツコツと打ち込むタイプ」よりも、「積極的に顧客とコンタクトを取り、会話の中から要望を引き出すことができたり、相手に断られる葛藤を乗り越えられるタイプ」の方が向いていることが多いでしょう。

つまり、コミュニケーション力が高く、ストレス耐性がある人を見つけなくてはいけないということです。まずは自社を見渡し、採用したい職種で活躍している人を観察し、分析してください。その人が、どんな性格で、どんな学生生活を送っていたのか、社内でインタビューしてみても良いと思います。そうすることで「どんな人物を会社で必要としているのか」が見えてきます。

大切なのはリアリティです。他社の動きを意識しすぎるのではなく、まずは社内に注目してみることで、採用のミスマッチを減らすことができると思います。

ヒントは自社の中にたくさんあるのですね

そうですね。仕事の内容や環境などはそれぞれ違いますし、A社で活躍できる人がB社で活躍できるとは限りません。恋人や結婚相手もそうであるように「相性が良いかどうか」は大切なポイントです。まずは社内で活躍している人にぜひ注目してもらいたいですね。

それでは最後に、採用指標を探している採用担当者にアドバイスをお願いします。

学生を評価する際に、価値観を柔軟に持つことが大切だと思います。「こうでなくてはいけない」といった固定概念は、評価の邪魔になります。減点方式よりも加点方式で、まずは「その人の魅力」を見る余裕を持ってもらえたらと思います。

また、これまで学歴にこだわって採用してきた場合には、「学歴を評価することで得たかったものはなにか?」を一度振り返って考えてみると良いかもしれません。そして、それは「学歴以外」の判断基準では得られないことかどうかもきちんと見直してみましょう。

学歴もそれ以外も、一人の人を形作る要素の一つです。片側からだけの評価だけでなく、総合的な目線で見ることができるようになれば、より良い人材との出会いが増えるのではないかと思います。

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この記事の著者

山森 拓実
京都大学文学部倫理学科卒業。2015年に新卒でアチーブメント株式会社に入社。入社1年目から人事部 新卒採用担当として活動し、年間1万名の学生と最前線で関わる。その後、自身が企画を担当したサマーインターンが、キャリアパーク調べのインターンシップ人気ランキングにて3年連続1位という結果を残した。2020年~2021年の約2年間は、社長室 商品開発チームにて自社の教育プログラムの開発にも取り組む。現在は人事部にて採用、育成、労務、人事制度、総務を担当。Twitterフォロワー数は28,000名を超え、Twitter経由での内定出しも実現。複数メディアに取り上げられる。