sonar HRテクノロジーが発信する、
採用と人事の情報メディア

専門家コラム

- Column -
専門家コラム

夏のインターンで集客に失敗! 秋に挽回するためのインターンシップと集客活動とは?【採用賢者に聞く 第25回】

夏のインターンシップを実施したものの、思うように参加者が集まらずお悩みの採用担当者は多いのではないでしょうか? 多くの企業がインターンシップを実施する中、ただ待っているだけでは参加者を増やすことはできません。そこで、応募者を増やすために、夏以降にどのようなインターンや集客活動を行う必要があるのか、株式会社人材研究所のシニアコンサルタント・安藤健氏に詳しく話を伺いました。

株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤 健氏

青山学院大学教育人間科学部心理学科卒業。日本ビジネス心理学会 上級マスター資格。組織・人事に関わる人のためのオンラインコミュニティー『人事心理塾』代表。2016年に人事・採用支援などを手掛ける人材研究所へ入社し、2018年から現職。これまで数多くの組織・人事コンサルティングプロジェクトや大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務に従事。著書に『人材マネジメント用語図鑑』(共著:ソシム)。その他『日経ビジネス電子版』にて人事・マネジメント系コラム「安藤健の人事解体論」を連載

51%の企業が実施!8月のサマーインターン

まずは、昨今のインターンシップの実態からお聞かせください。

インターンシップを実施する会社は、この10年で急増し、もはや就職活動で欠かせないものの施策へと変化してきました。

実際、2013年卒対象のインターンシップを実施していた企業は、42%と半数を下回る程度でしたが、2023年卒対象では、なんと90.6%もの企業が実施していたことがわかっています。また、インターンシップを始める時期も年々早くなり、7〜9月ごろのサマーインターンをはじめ、10〜12月ごろの秋、1〜3月ごろの冬にもインターンシップが開催されています。
特にサマーインターンシップが開催される8月は、統計上、51%の企業がインターンシップを実施しているため、就活に積極的で情報感度の高い学生たちにとっては、早期に「社会人としてスキルアップを図れる場」「仕事の体験を通して、経験を積める場」として人気を博しています。

しかし、インターンシップの開催が少なかった時代に比べると、物珍しさからの参加は期待できなくなり、人気企業に参加希望が集中するため「人が集まりにくい」と悩む企業も増えました。

サマーインターンの失敗は、秋のインターンシップへと生かす

夏のインターンで人が集まらなかった場合、秋に集客を増加させることは可能ですか?

もちろん可能です。思ったように学生が集まらないため「失敗した」と落ち込むかもしれませんが、インターンシップの実施に慣れていないうちは当然、失敗もあります。うまくいかなければ「何が原因だったのか?」と分析して改善していけば人は集まるようになります。結果を焦りすぎず、まずは冷静に現状を分析することが大切だと思います。

どのようなことに注目しながら、改善点を洗い出していけば良いですか?

インターンシップに人が集まらない理由は主に二つ。ひとつは「プログラムに魅力がない」こと、もう一つは「ターゲットとする学生にうまくアプローチできていない」ことです。インターンシップの集客がうまくいっていない企業の話を伺うと、だいたいこのどちらか、もしくは両方に該当していることが多い傾向です。インターンシップの実施前には、どの企業も頭を悩ませて準備しているはずなので「まさか」と思うかもしれませんが、原因のほとんどはこの部分にあるといってもいいでしょう。

ただし、逆に考えるとこの部分が原因ならば問題改善は期待できます。プログラムも広報活動もいくらでも改善することができますからね。

「体感」を意識しながら、学生にとって魅力的なプログラムかどうかを徹底検証

プログラムを魅力あるものに改善するためには、どのようなことに注意すれば良いですか?

まずは「このプログラムは、学生にとって魅力的かどうか」を徹底的に考えてみるといいでしょう。どんなに時間をかけて考えても、学生にとって魅力がないプログラムであれば、自分の貴重な時間を使ってまで足を運ぼうとは思いませんよね。とてもシンプルな話です。私が調査したところによると、企業が行っているインターンシップのプログラムの配分は以下です。

仕事の疑似体験:15%
社員との交流:14%
社内見学:10%
会社紹介:60%

インターンシップと言いつつも、約60%の時間が会社紹介に費やされていることがわかりました。こうなると、学生たちはインターンシップの大半の時間を、ただ座って会社の説明を聞いていただけ、ということになります。

これがいわゆる会社説明会であれば問題ないのですが、インターンシップに参加する学生たちは、「この会社で働くとどんなことができるのか?」「自分に向いているかどうか」など、体感を求めて足を運んでいます。また、今はインターネットである程度の情報を自分が欲した時に得ることができるため、情報を一方的に与えられることに価値を感じることは少なくなっています。

ですから、まずは「会社説明の時間」を見直してください。そして、長いと感じた場合には思い切ってカットすることも検討しましょう。

会社説明をカットして時間の配分を工夫するのも一つ、というわけですね。

その通りです。実際に、インターンシップに求める要素を学生に聞くと、学生が求めているものと会社が提供しているものには大きなギャップがあることがわかります。このギャップが大きければ大きいほど人は集まりにくくなります。私が調査したところによると、学生がインターンシップに求める要素は以下の配分になっています。

仕事の擬似体験:53%
社員との交流:40%
会社見学:4%
会社説明:3%

この配分を見ると、会社説明を求めているのはたったの3%程度でしかないことが分かります。
ですから、学生たちがただ座ってじっと聞いている時間はできる限り削り、実際に何かに取り組むことで「経験」や「知識」を得られる、「参加したからこその価値」を感じる時間を増やしていくことが最も大切なことだと考えます

しかし、会社の魅力を知ってもらうことも大切なのではないでしょうか?

もちろん大切です。しかし、黙っていても人が集まる大企業、有名企業の場合は別ですが、「一方的に自社の魅力をアピール」するよりも、「魅力のあるプログラムの提供」で、より多くの人にアプローチする方が、インターンシップを開催したメリットが大きくなると思います

例えば、自社が属する業界の魅力や現状を紹介し、問題点についてディスカッションしていくようなワークを取り入れる。そうすれば、その業界全体に興味を持っている人全体にアプローチできますし、参加した学生にとっても「業界に対する見識を深めることができる」という魅力があります。

その流れの中で、自社の立ち位置や他社とは違う独自の魅力についてさりげなく触れる。言うなれば「業界マップ」の一部として紹介するのもいいでしょう。そうすれば押し付けがましくなく、魅力をアピールすることができると思います。

自社のアピールにこだわりすぎない方がいいということですか?

私はそう思います。夏のインターンシップや秋のインターンシップは、本採用までにまだまだ時間があるタイミングで、就職活動をしている学生たちも何かを探している段階です。そのため、まずは、「業界自体に興味を持ってもらう」くらいの気持ちで接するのがいいと思います。また、志を同じくするパートナー企業や同業他社との合同インターンも面白いかもしれません。特に飲食業界など、人が集まりにくい業界では非常に有効な方法ではないでしょうか。
「インターンシップとはこうあるべき」という決まった形はありませんので、柔軟な発想で色々と試してください。そして、魅力的なインターンシップを行えれば、学生たちのクチコミで徐々にその魅力が広まっていくこともあると思います。

学生たちに“体感”してもらうことがひとつのキーワードになりそうですね

体感は経験であり、参加しなければ得られないものですから、魅力として大きいものだと思います。ですから、まずは「自分が学生だったらどんな経験をしたいか」と考えてみること。もし、わからない時は、新卒で入ってきた社員や、実際にインターンシップに参加してくれた学生たちの生の声を聞いて「学生たちが今求めているもの」を知ると、より魅力的なプログラムが作れるのではないかと思います。

具体的なターゲットを設定し、効果的なアプローチ法を選択する

ターゲットに効果的にアプローチできていない場合、どのように改善すれば良いですか?

まずは、自社のターゲットについて考察してみることが大切ですね。体育会系の人を求め、そこに向けてプログラムを作ったのに、広報する場所を間違えてしまったら、そもそも求めているターゲットにその情報は届きません。自分たちのターゲットとする人物がどんなコミュニティに属し、どんな方法で情報を入手しているかを事前に調べて、より効果的なアプローチを模索する必要があります。
また古典的な方法ですが、「合同説明会に参加する」、「大学に連絡してチラシを置いてもらう」、「連絡が取れる学生にアプローチする」なども重要なアプローチです。
特に個別のアプローチは効果的です。可能なら、電話で話をするのもいいでしょう。学生たちには多くのDMが届きますから、一斉送信のようなメールだと見逃される可能性も高くなります。その点、電話なら個別で深いコミュニケーションも図れますので、効果もそれだけ大きくなります。マンパワーが必要になりますが、試してみる価値はあると思います。

それでは最後に、採用担当者へメッセージをお願いします。

多くの企業がインターンシップを実施する時代になり、待っているだけではなかなか人は集まらなくなってきました。より多くの学生を集めるためには、何よりも「参加する価値」を提供することが大切です。
「我々が、参加してくれた学生に提供できるものはなんだろう?」と、まずはじっくり考えてみてください。そして、自由な発想でプログラムを組み立てて、狙ったターゲットに確実にアプローチしていきましょう。

そうすれば、夏のインターンでいい結果を出すことができなかった企業でも、秋に挽回することができるはずです。諦めずにトライしてください!

オンラインインターンシップとは?企画内容が満足度の高いインターンシップのカギ
インターンシップとは?研修プログラム内容の決め方!主な種類・期間とともに徹底解説
1dayインターンはどう作る?学生を惹きつけ1dayインターンシップの作り方【採用賢者に聞く 第24回】
採用につながるインターンシップとは?実施するコツと事例を参考に優秀な人材を確保しよう
企業側のインターンシップ受け入れ準備!インターンの目的、注意点、リスク管理

この記事をシェアする

この記事の著者

安藤 健
株式会社人材研究所
シニアコンサルタント
https://jinzai-kenkyusho.co.jp/

青山学院大学教育人間科学部心理学科卒業。日本ビジネス心理学会 上級マスター資格。組織・人事に関わる人のためのオンラインコミュニティー『人事心理塾』代表。2016年に人事・採用支援などを手掛ける人材研究所へ入社し、2018年から現職。これまで数多くの組織・人事コンサルティングプロジェクトや大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務に従事。著書に『人材マネジメント用語図鑑』(共著:ソシム)。その他『日経ビジネス電子版』にて人事・マネジメント系コラム「安藤健の人事解体論」を連載。