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現場社員を採用活動に巻き込むポイント!見極め方と育て方 (後編)【採用賢者に聞く 第21回】

採用活動に現場社員を巻き込みたいと考える企業は多いものの、どのように採用ノウハウなどを現場社員に落とし込むか悩んでいる企業も少なくありません。そこで今回は、「採用活動に現場社員を巻き込む方法 後編」として、適切な人材を見極めるためのポイントや必要なトレーニングなどについて株式会社人材研究所のシニアコンサルタント・安藤健氏に語っていただきました。

 
全編はこちら:現場社員を採用に巻き込む方法と成功事例(前編)

株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤 健氏

青山学院大学教育人間科学部心理学科卒業。日本ビジネス心理学会 上級マスター資格。組織・人事に関わる人のためのオンラインコミュニティー『人事心理塾』代表。2016年に人事・採用支援などを手掛ける人材研究所へ入社し、2018年から現職。これまで数多くの組織・人事コンサルティングプロジェクトや大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務に従事。著書に『人材マネジメント用語図鑑』(共著:ソシム)。その他『日経ビジネス電子版』にて人事・マネジメント系コラム「安藤健の人事解体論」を連載

人事部は“コーディネーター”を目指してほしい

今回は後編ということで、まずは前回のお話の振り返りをよろしいでしょうか。

前回は、採用活動を「人を集めるフェーズ」「選考のフェーズ」「内定後のフェーズ」と分け、それぞれのフェーズに合わせて現場社員に関わってもらいたいということ、現場社員に関わってもらうメリットなどをお話しさせていただきました。もう一度、簡単に説明させていただきます。

【フェーズごとの関わり方】
●説明会など、人を集めるフェーズ
多くの学生に向けて、会社の魅力や現場の生の声を伝え、エントリーにつなげる役割を担う。

●選考のフェーズ
一次面接やグループディスカッションで学生の資質を見ます。若手社員はグループディスカッションの場に出ることが多く、面接官は現場のマネジャークラスの方が務めることが多い。

●内定後のフェーズ
内定後のフォローを若手社員に任せ、育てたいという主体性を持ってもらいます。学生にとっては社内ネットワークを構築するきっかけになる。

フェーズごとに役割は異なります。「見極め」に協力してもらうのか、「フォロー」に協力してもらうかで、依頼する現場の社員は変わると思います。

【現場社員が関わるメリット】
●応募する学生のメリット
現場のリアルを知ることで、入社後のイメージがわき、リアリティショックを軽減することができる。

●人事部のメリット
近年、人事部のリソースが減っているなか、負担軽減になる。

●現場社員のメリット
採用活動を通じて、自社の魅力の棚卸につながり、その過程を経ることで、社員本人のエンゲージメントの向上にもつながる。

採用活動に現場の社員を巻き込むことは、応募する学生、人事部、そして現場の社員の三方にとってメリットがあるので、ぜひ推進してほしいと思います 。

人事部主体で、採用活動に関わる「現場の社員」を選ぶ

まず、採用活動に関わる社員はどのような人材が適任だと思われますか?

まず現場の社員は大きく分けて以下3つに分類されます。

・高いパフォーマンス(業績)を上げている「ハイパフォーマー」
・平均的なパフォーマンスを上げている「アベレージパフォーマー」
・様々な理由でパフォーマンスが低い状態となってしまっている「ローパフォーマー」

そして、採用活動に協力してもらうならば基本的に「ハイパフォーマー」が望ましいと思います。実際に成果を出しており、仕事に強いやりがいを感じていたり、エンゲージメントも高い状態にいたりするわけですから、学生に対してポジティブなことを発言してくれるでしょう 。

一方、懸念として、組織の「2:6:2の法則」とも言われる通り、そもそも「ハイパフォーマー」が組織の中にそれほど多く存在しないということが挙げられます。そのうえ、少数の「ハイパフォーマー」だけを選んでしまうと、性格タイプや仕事の進め方が偏っているケースがあり、特定の学生しか口説けない可能性もあります。そういったことを避けたい場合は、組織の大部分を占める「アベレージパフォーマー」の中からさまざまな特性を持った社員を選んだほうがいいかもしれません。

学生との相性も選択の中で心がけるべきなのですね?

学生との相性はとても重要です。特に現場の社員に内定後のフォローをお願いする場合は、学生に自社の魅力を感じてもらい、最終的には入社を決意(内定承諾)してもらう必要があります。そのためには「人を集めるフェーズ」の会社説明会で行うような会社の一般的な魅力を伝えるだけでなく、目の前の学生に刺さる魅力で強く訴求しなければなりません。そのためにはまず、目の前の学生がどういった部分に魅力を感じるかという見立てを行い、同じような性格タイプ・志向性・価値観の社員を選ぶ必要があります。

学生が持つ価値観はタイプ分けできるのでしょうか?

学生の志向性・価値観のタイプは働く上でのモチベーションの源となるものを起点に考えると、大きく4つに分けられます。

・タイプ1_どこで働くのか
会社の知名度や業界のシェアを重視しているタイプです。このようなタイプには社会的認知度や社会貢献度などに価値を置いている社員を選ぶと良いでしょう。  

・タイプ2_どんな仕事をするのか
会社の規模や業界のシェアではなく、実際に自分がしている仕事に魅力を感じるタイプです。会社の仕事を通じてどんなスキル、人脈を身につけられるかを重視する学生には、大きなプロジェクトの中核を担うことに価値を置いている社員を選ぶと良いでしょう。  

・タイプ3_誰と一緒に働くか 一緒に働く人がどんな人なのかによって仕事を選ぶタイプです。このような学生には「私たちは今、5人のチームでプロジェクトを動かしていて、それぞれ、こんな人がいて……」といった人の特徴やタイプについて話ができる社員を選ぶと良いでしょう。  

・タイプ4_生活・ワークライフバランス重視 仕事をすることを通じて自分の生活が豊かになることをモチベーションとしているタイプです。仕事とプライベートの両方を充実させている社員を選ぶと良い結果が得られると思います。

会社全体を巻き込み、リクルーター制度を成功に導く

採用活動に現場の社員を巻き込む際、適切なアプローチの方法や順番などはありますか?

立候補制にするか人事部主導で指名するかで悩む会社が多いと思いますが、人事部主導で選んだほうが、さまざまなタイプの社員を集められると思います。その際に、過去のパーソナリティサーベイの結果やこれまでの人事評価結果などを加味して、学生のタイプに合わせた人材を選ぶようにしてください。現在は「タレントマネジメントシステム」などで全社員の属性情報を一元管理している会社も増えてきていますので、性別や出身地などさまざまな切り口で選定することができると思います。

また、アプローチの順番としては、

①誰に依頼したいのか協力社員リストをつくる 
②現場のマネジャーや責任者へのコンセンサスをとる 
③OKが出たら依頼したい社員にアナウンスをする 
④依頼する社員へのガイダンスを行なう

といった流れが一般的です。

現場の社員に対して、採用活動参加へのモチベーションを上げてもらう方法はありますか?

採用活動というのは、いわば会社の看板として表に出ていくわけですから、基本的には好意的に受け取ってくれるケースが多い印象です。ここで大切なのは、「あなたは会社から選ばれた人である」という伝え方をすることです。そこで、万が一「採用活動を手伝う具体的なメリットは何ですか?」と聞かれることもあるので、人事評価に組み込んだり、手当を出したりといった制度の検討が必要になるかもしれません。

現場の社員を選んだ後、適切なガイダンスやトレーニングの仕方はあるのでしょうか?

まずマニュアルやガイドラインをつくってください。でも、つくるだけではダメで、それをしっかりと覚えてもらうための工夫が必要になってきます。たとえば最近、コンプライアンスやハラスメントの事案が多くなっていますが、ハラスメントが起きうるような状況をつくらない仕組みが重要です。たとえば、「学生との連絡には個人LINEを使用してもよい」というルールにしてしまうと、ハラスメントが起こる可能性があります。そこで、リスクを極力避けるためにも、「会社が用意したメールアドレスを使用して、就業時間内に連絡を取る」といったルールも組み込むようにしてください。

その他にも、会社の事業の方向性や事業戦略については、ある意味好き勝手に話されてしまうとまずいと思うので、事前にできる限りどのような方向で説明をしてもらうか共有しておく必要があります。そのためにも、ガイダンスやトレーニングに参加する時間をつくってもらうようにしましょう。

適性が合わずに失敗した事例を紹介

採用活動に現場の社員を選んで失敗した例や改善例を教えていただけますか?

<金融機関の事例>

この会社は、リクルーター制度をつくったのですが、現場の社員を巻き込む際に、タイプ別に社員を選ぶことをせずに、入社3年目までの社員の中で日程が合う人を選んでいました。もともとの内定承諾率が50%程度だったところ、リクルーター制度を取り入れた結果55%にアップ。しかし、逆に言えば、たった5%しか上がらなかったということです。

では、その問題はどのように解決したのでしょうか?

入社した学生と内定を辞退した学生、それぞれにインタビューを行いました。すると内定承諾率の向上した割合と同じ5%の学生からは「現場社員の声が聞けてよかった」という声を聞くことができました。これは求めていた通りの結果です。対して内定辞退者のインタビューからは「聞きたいことを聞けなかった」という声が多く挙がる結果に。その中では、「20代で1千万円稼げるようになりますか?」という学生の質問に対して「そういうモチベーションで仕事をしないほうがいいよ」と指摘された事例などがありました。つまり、学生のモチベーションと社員のモチベーションに乖離があり、内定辞退に至ったという例です。

この会社にはインタビュー結果を開示して、アドバイスを行いました。その結果、性格タイプの適性検査を実施し、学生に合わせて現場の社員のタイプを選ぶなどの改善を行い、内定辞退率は改善してきたと聞いています。

最後に、採用活動に現場の社員を巻き込むためのポイントとは何ですか?

現場社員を巻き込むことは採用活動に多くのメリットをもたらします。それは前編でも触れましたが、人事部にとっても、現場にとっても、学生にとっても、それぞれにいい影響を与えます。ただ、現場の社員を巻き込むための準備や方法など、しっかりと制度設計を行う必要があります。また、採用活動は人同士が行うものなので、相性が非常に重要です。学生のパーソナリティの見極め、自社の社員の適性の見極めなどをしっかりと行うことが成功への近道と言えるのではないでしょうか。

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この記事の著者

安藤 健
株式会社人材研究所
シニアコンサルタント
https://jinzai-kenkyusho.co.jp/

青山学院大学教育人間科学部心理学科卒業。日本ビジネス心理学会 上級マスター資格。組織・人事に関わる人のためのオンラインコミュニティー『人事心理塾』代表。2016年に人事・採用支援などを手掛ける人材研究所へ入社し、2018年から現職。これまで数多くの組織・人事コンサルティングプロジェクトや大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務に従事。著書に『人材マネジメント用語図鑑』(共著:ソシム)。その他『日経ビジネス電子版』にて人事・マネジメント系コラム「安藤健の人事解体論」を連載。