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「電話に出れない」が理由!?新卒早期離職の現実と実践すべき対策とは【識者に聞く 第五回】

せっかく入社したにも関わらず、3年以内という早い段階で離職してしまう新入社員は約30%程度というデータがあります。採用のために多くのリソースを費やしている企業にとっては、早期離職を食い止めたいというのが本音ではないでしょうか。新入社員が離職を考えるタイミングや理由、さらにどのような対策を行うべきかなどを、産業カウンセラーでメンタルアップマネジャーの日本メンタルアップ支援機構の代表理事・大野氏に聞きました。

一般社団法人 日本メンタルアップ支援機構 代表理事 大野 萌子

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

早期離職者の割合は20年間、約3割程度で推移

早期離職者の割合は大体どれくらいで推移しているのでしょうか?

厚生労働省が発表している資料があるのですが、大学卒の早期離職率は、ここ20年ほど約3割程度と考えていいでしょう。1999年~2005年のバブルが崩壊した時期に35%程度と上昇した時期があったのですが、その後は32%程度で推移しています。最新のデータによると、2021年の離職率は32.8%で、これは過去10年で3番目の低さになります。理由としては、コロナ禍による影響が大きく、転職活動を控える人が多かったのではないかと考えられます。

【大学卒3年以内離職率の推移】
・黄色:1年目
・ピンク:2年目
・白:3年目


厚生労働省 2021年10月発表

早期離職をするタイミングや理由はどのようなものが考えられるのでしょうか?

入社2年目や3年目の社員を含めてしまうと多岐にわたるので、入社1年目の新入社員に絞ってお話しします。彼らが離職を考える時期は大きく3つに分類できます。

1 入社してすぐの時期
2 入社から1か月ほど経過した5月連休明けあたり(一般的に5月病と呼ばれる時期)
3 研修期間が終わり、配属が決まるタイミング

●入社してすぐの時期
近年増えているのが入社してすぐに辞めてしまうという人たちです。上司や先輩に活気がないとかロールモデルとなる先輩がいないといった理由をよく聞きます。しかし、実際のところは就職活動をしている段階と入社して実際の会社を見たときのギャップが最大の理由だと考えられます。社屋が古かったという離職理由もありますから、自分のイメージと乖離した部分を見て、離職を決める原因になっているようです。

●入社から1か月ほど経過した時期
一般的にも5月病と言われるように、5月のゴールデンウィーク明けに心身の不調を訴える時期と重なります。ストレスのもととなるストレッサーは環境の変化によるものが大きく、新入社員は、必然的に4月から大きなストレスを抱えることになります。この時点で、ストレスをうまく発散させることができればよいのですが、入社して間もない時期は、そのような余裕がありません。その結果、ストレスを抱えたままの状態が持続され、心身の不調に繋がります。体調の悪さと気分の落ち込みから、このまま続けていかれないという結論を出しやすくなります。

●研修期間が終わり、配属が決まるタイミング
企業の研修を終え、配属が決まったタイミングも離職が増える時期です、まず配属先が希望通りではなかったことが挙げられます。また、関連会社への出向や本社ではなく支社に配属された場合なども離職を考えるひとつのきっかけになっているようです。自分の希望が通らないから離職する、というと一見ワガママに感じるかもしれませんが、実態は企業側と意思疎通ができていない場合が多く見られます。希望や意見を聞かず、配属の理由も伝えずに配属先を決めた場合に起こりがちといえるでしょう。

ここ数年の新入社員の傾向。離職の実例と対策

最近の新入社員の傾向などはありますか?

以前に比べて孤立感や孤独感を訴えるケースが増えているように感じます。コロナという背景もありますが、以前なら同期の集まりや飲み会などで横のつながりをつくることができていましたが、最近では歓迎会すら禁止になっている状況です。そのため、なかなか相談できる相手をつくることができません。結果、不安を抱いてしまい孤立感や孤独を感じ、離職につながりやすくなっているという印象です。

どのような経緯で離職に至ったか、実例を教えていただけますでしょうか?

最近増えていると感じるのが以下のような理由です。それぞれについて解説します。

1.電話が取れない
2.配属先に不満がある
3.職場環境に不満を持つ

●電話が取れない
最近増えているのが「電話に出るのが怖い」という理由から離職に至るケースです。40代以降の管理者が育ってきた時代とは違い、20代以下の人たちは、生活の中で電話を使う経験をほとんどせずに成長し、電話ツールに対するスキルが低い状況です。新卒者対象のアンケートでも、親しい相手への連絡手段として電話を使うとの回答は、10%を切っています。それくらい時代背景が変わってきているといえるでしょう。

・電話が取れずに退職する新入社員への対策
電話に出るのは新入社員の仕事、という意識をまず変えることです。最近の新入社員は電話のスキルが低いことを前提に、必要であればそのスキルを教える必要があります。社内連絡で電話を使うとか、遅刻や欠勤の連絡は必ず電話で行うというルールをつくるなど、身近な部分から電話に慣れてもらう仕組みを構築するなどの対策が必要です。

●配属先に不満がある
研修を終え、配属されて第一印象でショックを受けるケースもよく見られます。まず希望した配置先ではなかった場合が挙げられます。その他にも、配属された部署の雰囲気がイメージと違っていたり、上司や先輩から相手にしてもらえなかったりなど。私が聞いた事例としては、面談の際に上司から「プロジェクトを一緒にやろう!」と言われたのに、実際に配属されたらファイル整理しかさせてもらえなかったため離職、というケースもありました。

・配属先に不満があり退職する新入社員への対策
配属についての希望を聞く企業も多いと思いますが、その際にあくまで希望であること、決して希望通りに配属されるわけではないことを事前に伝えておくことが第一です。そして何よりも相談したり、気持ちを話せる場をつくったりするということが必要だと思います。ある企業は入社1年目には必ずカウンセリングを受けさせるというルールを設けているのですが、そのルールのいいところは悩んだり、行き詰ったりしたときに相談できる場を最初に段階で知ることができるという点。離職を検討している場合、話すことで収まることも少なくありません。新入社員の悩みや不安を常に受け止められる体制をつくることが必要だと思います。

●職場環境に不満を持つ
主に人間関係の不満が原因となるケースです。部署全体に活気がない、ロールモデルがいない、体育会系でしごかれる、自分に向けられる視線が冷たいなど、職場の雰囲気に不満を持ってしまうと離職を考えてしまいます。

・職場環境に不満があり退職する新入社員への対策
離職問題の中で、職場の雰囲気や人間関係というのは普遍的なものなので、抜本的な対策としては難しいと思います。ただ、ここ十数年、毎年、コンスタントに新入社員が配属されるなんてことはまずなくなっています。それはつまり、受け入れる側が慣れていないとも言えます。受け入れる側としては、ハラスメントの問題にも敏感になっていますから、新入社員にどう接していいか分からない。その結果、新入社員が職場環境に不満を持ってしまうという背景もあります。受け入れる側へのレクチャーや研修を行う必要があるように感じています。

早期離職を防ぐには、積極的なコミュニケーションを!

早期離職を防止するためにはどのような対策を行うべきでしょうか?

まず新入社員と積極的に関わる姿勢を持つことです。私が新入社員研修をしていて感じることは、ここ5~6年で自ら発信しない人が増えているということです。誰かに相談したり、人に尋ねたりといったことが苦手な人が増えています。実例としては、コピー機の使い方がわからない時に、周りの人には聞かずスマホで調べてたり、質問したいことがあったけど上司が忙しそうにしていたから機会を逃して1日過ぎてしまったとか、そういった話も聞きました。でも、放置されてしまうと孤立感や孤独を感じてしまう。つまり、最近の新入社員の傾向は、自分から積極的に話しかけてこなくて、話しかけられるのを待っている、と言えます。そこで上司や先輩のほうから積極的に話しかける、もしくは気軽に相談できる場をつくるようにする、そういった対策が必要だと思います。

コミュニケーションの取り方が重要ということですね? コツはあるのでしょうか?

たとえば1on1の場面を想定しますが、その際の質問の仕方に注意していただきたいと思います。質問にはオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンというものがあり、多用しないようにしたいのがクローズドクエスチョンです。これは、YES・NOや端的に答えられる質問です。「何が問題なの?」とか「いつから考えていたの?」などですね。こういった質問ばかりされると尋問されているような気持ちになり、逆効果になってしまいます。対してオープンクエスチョンは「どうしたの?」「どう考えているの?」など、相手の気持ちを話すように促す質問です。まずオープンクエスチョンで相手の気持ちを発散させて、その後、適切なアドバイスを送るようにする。そういったことを心がけることが大切です。

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この記事の著者

大野 萌子
一般社団法人 日本メンタルアップ支援機構
代表理事

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。