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オンライン採用の救世主?「構造化面接」の効果と実践マニュアル【採用賢者に聞く 第19回】

オンライン面接が当たり前になりつつある昨今。採用手法の中でも注目を集めているのが、「構造化面接」です。構造化面接とはどのようなものを指すのか、なぜコロナ禍で注目を集めているのか、実施・導入するための心構えやフロー、事前に理解しておくといいポイントなどを、株式会社人材開発研究所のシニアコンサルタント・安藤健氏に解説していただきます。

株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤 健氏

青山学院大学教育人間科学部心理学科卒業。日本ビジネス心理学会 上級マスター資格。組織・人事に関わる人のためのオンラインコミュニティー『人事心理塾』代表。2016年に人事・採用支援などを手掛ける人材研究所へ入社し、2018年から現職。これまで数多くの組織・人事コンサルティングプロジェクトや大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務に従事。著書に『人材マネジメント用語図鑑』(共著:ソシム)。その他『日経ビジネス電子版』にて人事・マネジメント系コラム「安藤健の人事解体論」を連載

ジャッジの精度を高める、臨床心理学発祥の面接手法

―「構造化面接」とは、どのような採用手法なのか教えてください。

「構造化面接」とは、面接での質問内容、面接にかける時間や流れ、合格基準(どの項目がどの程度の基準に達していればよいか)などを事前に定めてから実施する面接のことです。これは、ただ単に「1人あたりの面接は1時間で、アイスブレイク~質問~逆質問と流れも決まっている」、「“コミュニケーション力”や”積極性”などといった項目を設けて、各5点満点評価をしている」ということではありません。たとえば、その「コミュニケーション力」の定義や、どのような基準で「5点」と評価をするのかが面接官同士で統一され、評価の認識があっていることが重要なのです。また、構造化面接の対義語として、「非構造化面接」という言葉もあり、構造化されていない面接、要はフリーな面接を指します。面接官が何を質問しても、どう進めてもよく、面接官自身の基準で合否を決めてもよい、というものです。会話に近い形式だといえるでしょう。

―そんな「構造化面接」は何がきっかけで実践されるようになったのでしょうか?

「構造化面接」の発祥は、私自身昔深く関わっていた「臨床心理学」の分野からと言われています。確かに心理臨床の世界では、カウンセラーはクライエント(来談者のこと)の心的状態を短時間で正確に見極めなければなりません。そのために発展してきたのが構造化面接なのです。これがアメリカなどを中心に一般企業の採用面接にも応用され始めました。

日本企業は、従来、面接官の勘と経験に依存する非構造化面接が多い傾向にありました。しかし、非構造化面接は属人的な判断に委ねられているため、そこには認知バイアスがかかります。この認知バイアスによる雇用の不平等が、多民族国家であるアメリカでは、早くから問題視されていました。そのため、企業の社会的責任として採用面接においても精度を高める努力が求められ、その中で注目されたのがこの構造化面接というわけです。

オンラインでの構造化面接は応募者の志望度向上にも効果

―「構造化面接」が、オンライン面接と相性が良い理由について教えてください。

質問内容が予め決まっている構造化面接は、言語情報が取得する内容のすべてです。そして、この言語情報は、オンラインでもしっかり伝えることができます。一方、フリーな質問をキャッチボールのように受け応えしていく非構造化面接では、言語情報に加えて、表情や身振り手振りといった非言語情報も重視されます。しかし、オンラインでは以下のような理由で非言語情報が得づらいため、面接官と応募者はお互いに意思疎通がうまくできなかったと感じ、マイナスな印象になってしまいがちです。

▼リアルの会話に比べオンラインでの意思疎通が難しい理由

●会話の同期性が低い
通信環境等の問題で、会話の同期性が下がることがあります。これによって、会話のテンポ、タイミングという非言語情報が得づらくなります。  

●アイコンタクトがとりにくい
アイコンタクトには、「話者の交代を示唆する」「話を聞いていることを相手に伝える」という重要な非言語情報が含まれています。しかしオンラインの場合、意識的にWebカメラを見ないと、相手に視線を送ることができません。また、Webカメラ(PCのカメラレンズ)を見てしまうと、相手の顔を見ることができないためアイコンタクトを取ることが不可能です。すると「話す人がうまく交代できず、複数人が同時に発言してしまいお互いが聞き取れない」など、普通の会話がやりにくくなってしまいます。

ー対面できないオンライン面接で、かつ自由にやり取りできない画一的な面接をしてしまっては、応募者の不満につながりませんか
オンライン面接と対面面接を比較した過去の研究成果によると、オンライン面接の場合は、フリーで質問する「非構造化面接」よりも、質問内容が定められた「構造化面接」のほうが、志望度が高まるという結果も出ています。

このような結果が出る原因として、応募者側の能力発揮感が考えられます。応募者の志望度を左右する要素の一つに、能力発揮感というものがあります。これは平たく言ってしまえば、面接に手応えを感じたかどうかで、実は応募者の志望度を左右する要素の一つでもあります。
オンラインの非構造化面接では会話が成立しにくいので、応募者側としてはなかなか手応えをつかめず、能力発揮感が低下してしまいます。すると、「面接官がうまく聞き出してくれなかったからだ」というように、原因を取り違えてしまう「誤帰属」という心理作用が発生し、志望度を下げてしまうことも。対照的に、構造化面接では言語情報をしっかり伝えられるため、応募者も能力発揮感が高まり、それに伴って志望度も上がった、と分析しています。

「構造化面接」の導入成功に向けて、押さえておきたいこと

―「構造化面接」にメリットを強く感じますが、一方でデメリットはありますか。

面接には、相手を見極める「ジャッジ」と、動機づける「フォロー」の2種類の役割があります。構造化面接は、ジャッジに関してはメリットがありますが、フォローの観点ではデメリットがあります。誰に対しても決められた同じ質問を投げかけることになるので、ある意味、面接官は人工的な機械のような存在になるからです。機械化したようにも見える面接官に対して、「一緒に働きたい」という動機づけは、なかなか難しいでしょう。このため、ジャッジしたいときには「構造化面接」、フォローしたいときには「非構造化面接」と、それぞれの面接の目的を明確にし、両者のハイブリッド型で実施することが、ベストだと考えます。

―具体的には、どのような採用フローを組むとよいでしょう?

応募者に対するジャッジが必要な採用フローの前半(一次・二次面接)は「構造化面接」を設定することをおすすめします。そこで良い人材かどうかを見極め、採用フローの後半(最終面接や内定者フォロー)に、フォローを目的とした「非構造化面接」を設定するとよいでしょう。できれは、感情に訴えかける非言語情報が伝わりやすい、直接対面が効果的かと思います。このように、「ジャッジ」と「フォロー」の目的に応じて、オンラインとリアルを使い分け、採用フロー全体を「構造化」することが有効だと考えます。

―「構造化面接」の導入にあたって、どのような準備が必要でしょうか?

構造化面接は、明確な採用時の評価基準があることが前提です。採用時の評価基準は、求める人物像に紐付いており、求める人物像は、その会社の人事評価項目・評価基準に紐づいていることが多いです。つまり、構造化面接を実施するには、今一度、社内の人事評価項目・評価基準を確認することが必要なのです。
イメージとしては、以下のような流れです。
① 自社における「こういった行動や能力を評価する」という具体的な人事評価基準を確認する
② 入社後には人事評価基準に沿ったパフォーマンスを発揮してもらうため、採用時点で持っておかなければならない要件を抽出する(これが求める人物像と評価基準)
③ ②に紐づけて実際の面接でどんな質問をするかを考える。

では上記を踏まえたうえで、もう少し詳しく説明をしていきましょう。
たとえば、自社の人事評価項目の1つに「協力・協調行動」があった場合、採用時点では、協力・協調行動のベースとなる「アサーティブコミュニケーション力(相手を尊重しながら適切に自己主張できる力)」や「対人感性力(人と話すときに相手の意図や気持ちを汲んで共感できる力)」が求められます。これが採用時の「求める人物像と評価基準」というわけです。その中で、たとえばアサーティブコミュニケーション力を見極めるための質問項目は以下のようなものがあります。


<有効な質問の例>
・これまでに、上手に自分の意見を発信しながら、周囲を動かしてきた経験はありますか
・これまで、他者と利害がぶつかる場面においてどのようにコミュニケーションを取ってきましたか
などが考えられます。
また、コロナ禍による事業戦略の変化、対面からリモートへのワークスタイルの移行などによって、求める人物像が変わった場合は、社内の評価項目・評価基準についても、見直しが必要になると思います。

出会いに誠実であるためにも、フェアなジャッジを

―営業職など人間力が問われる職種の場合、「構造化面接」ではわからない非言語情報も重要ではないでしょうか?

非言語情報も重要かと思いますが、そもそも構造化面接の導入は、明確な評価基準でジャッジすることを目的としています。二人の面接官で同じ応募者を面接したとき、非構造化面接では合否が分かれる可能性があります。つまり、応募者側からすると、どの面接官に当たるかという“運”で採用の成否が決まってしまうということ。これはアンフェアですし、企業としても採用リスクが高まります。

仮に、営業職で「外向性」という適性が必要だった場合、応募者の印象や雰囲気という非言語情報でジャッジしてしまうのではなく、その人がこれまでやってきたことで判断するべきだと思います。たとえば、営業経験があるなら前職ではどのようなコミュニケーションをお客様ととってきたのか、という事実ベースの言語情報でジャッジしたほうが、フェアに選考できるのではないでしょうか。

―「構造化面接」は、誰に対しても同じ質問をしますが、応募者の回答も画一的になりませんか?

採用基準に紐付いて質問を考えるので、質問は固定化されますが、回答はそれぞれの経験や具体例に基づくので、画一的にはならないはずです。むしろ、画一的にならないよう、その人の資質を深堀りするようなリッチな質問を用意してもらいたいです。たとえば、新卒採用で「学生時代に力を入れたこと」を聞きたい場合は、以下のようになると思います。

【リッチな質問の例】  
・「これまで、想定外に困難な出来事が起こったことはありますか? そして、それに対して、何らかの対処をして乗り越えようとしたお話があれば、お聞かせください。  
・できるだけ、難易度がイメージできるように、具体的に、定量的に、お話ください。  
・できれば、長期間に渡って行ったとこについて述べていただけますと幸いです。なお、失敗に終わった経験でも構いません」

会話のキャッチボールを通して、もっとも聞きたいことを最初から全部伝えておくのがポイントです。

―最後に、オンライン面接で「構造化面接」を導入することのメリットを、改めて教えてください。

オンライン面接で構造化面接を導入すると、ジャッジの精度を上げられるだけでなく、オンラインにおける非構造化面接よりも志望動機を高めることができると考えます。構造化面接に対して、なかには、「面接は人と人との出会い。同じ質問を機械的に実施することには抵抗がある」という方もいらっしゃるでしょう。しかし、完全にフリーな会話で面接官によって評価がブレてしまうよりも、応募者の資質をフェアに測るほうが、出会いに対して誠実だと私は考えます。

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この記事の著者

安藤 健
株式会社人材研究所
シニアコンサルタント
https://jinzai-kenkyusho.co.jp/

青山学院大学教育人間科学部心理学科卒業。日本ビジネス心理学会 上級マスター資格。組織・人事に関わる人のためのオンラインコミュニティー『人事心理塾』代表。2016年に人事・採用支援などを手掛ける人材研究所へ入社し、2018年から現職。これまで数多くの組織・人事コンサルティングプロジェクトや大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務に従事。著書に『人材マネジメント用語図鑑』(共著:ソシム)。その他『日経ビジネス電子版』にて人事・マネジメント系コラム「安藤健の人事解体論」を連載。