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「採用活動の課題解決②」初めての新卒採用…ゼロから成果を上げた実例【採用賢者に聞く 第8回】

学生向けの就活支援を行い、累計6千人以上の学生の就活支援を行ってきたスカラインターナショナル株式会社の代表、本間友規氏。就職活動という学生と企業のマッチングの現場に携わってきた本間氏が、前編に引き続き企業の採用課題とその解決方法を語ってくれました。後編は、初めて新卒採用を行った企業の事例です。右も左も分からなかったこの企業に、本間氏はどのような施策を行ったのでしょうか。

前編:採用活動の課題解決①採用の長期化、低受諾率…ある中小企業の事例 【採用賢者に聞く 第7回】

初めての新卒採用に直面、見えてきた2つの課題

―初めて新卒採用を行った企業とのことですが、どのようなクライアントだったのか教えてください。

30名~40名のスタッフを抱える、人材の斡旋を行っている会社です。中途の斡旋業がメインで、新卒採用に関してはほとんどノウハウがないということで相談を受けました。

課題を明確にしましょうと言っても、今までやったことがないことに挑戦するわけですから、そもそも何が課題なのかも分からないような状態です。結果、「御社が持っている新卒採用のノウハウを全部教えてほしい」というところから始めることになりました。

―新卒採用を手伝う中で、どのような課題が見えてきたのでしょうか。

大きく2つの課題が見えてきました。

1.採用要件の言語化

これは初期段階で見えてきた課題でした。初めての新卒採用なので、そもそも採用要件がまったく言語化がされていなかったという背景があります。「なぜ新卒を採用するのか?」「どのような人物像を思い描いているのか?」「どういうポジションで働いてもらいたいのか?」など、代表が考えている採用要件を言語化するという作業からスタートです。その会話の中から、「野心があるタイプ」「情熱を隠し持っているタイプ」「意思決定ができるタイプ」といったフレーズを引き出すことに成功。そのフレーズからは、「30名~40名程度の小さな会社なので、将来的には新規事業の開発ポジションなどに就いてほしい」という代表の思いが伝わってきました。

2.採用プロセスの決定

実は、この企業から相談を受けたのは一般的な採用活動よりもかなり遅い時期でした。マーケット的には大学3年生の夏から採用活動が始まりますが、この企業から相談を受けたのはそこから半年以上経った4月です。学生の就職活動としては、もはや終盤の時期に差しかかっているといえます。その時期にも関わらず「3名の新卒を採用したい」という要望に加えて、初めての採用ですから、決まった採用プロセスも持ち合わせていない…、まさに高いハードルづくしでした。

初めての新卒採用を考えているこの企業にとって、採用活動は未知のことだらけです。先ほど話した就職活動のスケジュールも、大学3年生の夏がフェーズ1とするなら、その後秋から年内がフェーズ2、年が明けて4月~6月くらいがフェーズ3となります。一般的に「優秀」といわれる学生ほど早期に内定が出ますから、初動が遅いほど優秀な人材の確保は難しくなります。しかし、この企業はこの時期からの活動でも3名の内定者を出すことに成功したんです。

「要件の言語化」と「採用プロセスの確立」がスムーズな採用を実現

―どのような戦略を立てて、この採用期間で3名を確保できたのでしょうか。

採用予定人数が3名というコンパクトな数だったこともあり、一本釣りでの採用活動が効果的ではないかと考えました。20名〜30名の学生を紹介し、代表が面接を行う、というプロセスです。

今回のように採用人数が10名以下の場合は、母数を追い求めなくても採用予定人数に達することが多いのでこのような活動でも問題ありません。しかし、これが採用人数30名以上になると、母数も重要な要素になってくるので、説明会やイベントなどに参加して、学生との接点をつくる活動が必要になります。さらに、採用人数が100名を超えるようになると、もはや母数を追いかける戦いになります。

―一般的な採用のプロセスと、それぞれのメリットとデメリットも教えてください。

一つ目は、この企業が行った「代表がすべての候補者と面接を行う」というプロセスです。メリットは、代表という会社のことをもっともよく知っている人物から、学生に適切な訴求を行えることです。自社の魅力や強みを自らの言葉で語ることができますから、インパクトもあります。

デメリットは、社内でもっとも時給が高い人を拘束するわけですから、コストパフォーマンスが悪くなります。採用人数が少ない状況ならいいのですが、多くなればなるほどこのプロセスは採用しづらくなります。

2つ目は、「人事担当者が面接をしたのち、決定権者につなげる」というプロセスです。

メリットは効率よく面接できるということです。ある程度、面接を経験していることが前提になりますが、人事担当者は採用活動のプロなので、自社にとってのよい人材を見極めることができます。また、代表ほどではないにしろ、自社の魅力を十分訴求できるはずです。

一方のデメリットは、現場の人間にしかわからないような具体的な業務内容などを詳細に語れないということです。

3つ目は、これらのデメリットを解消するために「現場の社員をつける」というプロセスです。メリットは、学生が実際の業務内容を詳しく知ることができるということです。ただし、ここにもデメリットは存在していて、現場の社員を面接に駆り出すわけですから、実務が滞ってしまうという課題も出てきます。

採用人数のボリュームと、それぞれのメリット、デメリットをかけ合わせることで、どのような採用プロセスを選択すべきかを決めると良いでしょう。

―つまり、この企業は採用要件の言語化とプロセスの構築がうまくいき、スムーズな採用活動が実現できたわけですね。

そうですね。自社の魅力を余すところなく理解し、経営戦略を常に考えている代表が直接面接を行ったからこそ、学生にもダイレクトに企業の魅力が伝わったのだと思います。たとえば、この企業の事業内容は中途の就職斡旋なのですが、他社との差別化として、「20代の未経験の転職支援」「さまざまなメディア運営による集客チャネル」という2点が挙げられます。こういった自社の強みや魅力を的確に学生に伝えることが採用活動において大切なのです。

この企業が求めている人物像が、従来の採用エージェントで活躍している人とは真逆の人物像だったことも印象深いですね。通常のエージェント業では、「愛嬌があり、貢献欲求が強い人」が活躍しやすいイメージです。しかしこの企業では、それに該当する人物はすでにいたため、数字をチェックして改善行動を繰り返していける人物を求めていました。ここまで明確に言語化されると、人事採用担当者としてもどんな人物を採用したいのか迷うこともないでしょう。

人事は経営。人事採用担当者に求められる経営戦略への理解

―採用要件の言語化について、代表が自ら面接を行うなら分かりやすいのですが、人事採用担当者が面接する場合、どのようにすり合わせればよいでしょうか。

採用要件の言語化というのは非常に難しい課題です。多くの企業がこの課題にぶつかっているのではないでしょうか。たとえば、言語化した後に候補者と会って話をするとしましょう。多くの場合、どうしても「その人の人物像を捉えるための会話」に終始してしまい、言語化した要件が取り残されてしまいます。

この課題を解決するためには、人事採用担当者が今以上に経営戦略を理解する必要があると考えます。採用活動は経営そのものですから、代表の話を聞いた上で、人事採用担当者自身がもっと踏み込んだ経営戦略を立案するくらいでなければなりません。「組織は戦略に従う」という言葉があるように、まず自社のビジネスモデルをしっかりと理解し、そのうえで事業計画について代表と密にコミュニケーションをとることが大切です。事業計画があるからこそ、欲しい人材が決められるということを、心に焼きつけてほしいと思います。

―この企業の新卒採用のプロセスにおいて、現在変化などはありますか。

プロセスは“生もの”です。この企業も初めの段階でいったんは採用プロセスを確立しましたが、状況に合わせて施策やルートは変化していくものです。今は、「代表と直接会う」「インターンを経由させる」など、さまざまな入口を用意して、新卒採用に本格的に力を入れ始めた段階ですね。

―初めて新卒採用を開始した企業のお話をうかがいましたが、同じような状況にある代表や人事採用担当者にアドバイスをお願いします。

採用の手法がたくさんある中で、どの方法を選ぶのかはそれほど大きな問題ではありません。それよりも、まず「なぜ採用したいのか」という部分を明確にするべきだと思います。たとえば「会社のカルチャーを受け継ぐ(もしくは変える)人を採用したい」という目的ならキャラクター重視の採用活動を選択するべきですし、「将来的に事業を背負える人を採用したい」という目的なら、スペック重視の採用活動が合っているでしょう。

「なぜ採用したいのか」「どんな人を採用したいのか」「どんな仕事を任せたいのか」など、代表も人事採用担当者も同じレベルでなくてはなりません、そして、代表と人事担当者が「採用要件を共有する」ことこそが、採用活動の第一歩だと考えます。

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この記事の著者

本間 友規
スカラインターナショナル株式会社
代表
http://www.scalaintl.jp/

2007年名古屋大学理学部卒業後、株式会社リクルートにてキャリア領域の広告営業および事業開発に携わる。2011年株式会社Speeeにジョインし、Webマーケティングのコンサルティングセールスに従事。その後「人と組織の可能性の最大化」を目指す株式会社人材研究所にて新卒事業部責任者を経て2013年に創業。主にスタートアップからミドルベンチャーの組織人事・採用領域のコンサルティングを提供しながら、学生向けの就活支援を8,000人以上実施。