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若き採用担当の悩み⑥内定者フォローの目的と実践法【第6回 採用賢者に聞く】

近年は売り手市場であり、学生は何社分かの内定を持ちながらも可能性を求めて、就職活動を続けるのが一般的となっています。そのため、最終的に、内定を辞退するということも珍しいことではなく、内定辞退率は高まる一方です。この内定辞退を防ぐために、効果的な内定者フォローの方法はあるのでしょうか。この悩みを解決するヒントについて前回に引き続き、株式会社アタックス・セールス・アソシエイツの採用コンサルタント・酒井利昌氏に伺いました。

前編:若き採用担当の悩み⑤面接の設計と実施について【採用賢者に聞く 第5回】

6割超えの内定辞退率からみる「動機づけ」の不足

――リクルートキャリアの就職みらい研究所が発表した「就職プロセス調査 (2021年卒)」の【確報版】「2020年10月1日時点 内定状況」によると、2020年10月1日時点の就職内定辞退率は60%となっており、相当数の応募者が内定を辞退しています。この現状をどのようにお考えですか。

一昔前の内定辞退率は3割程度だったことを考えると、非常に増えていると実感しています。これは売り手市場が加速していることも理由として考えられますが、直近の原因としてはオンライン採用が一般的となったことが大きく影響しているようです。オンラインでの接触では、企業側から学生に伝えられる情報が限られます。言語情報は伝わりますが、直接対面するからこそ伝わる企業の熱意や会社の雰囲気といった非言語情報が伝わりにくいのです。これが、学生への「動機づけ」を不十分にさせる原因であり、従来のリアルな就職活動と比較した際、「この企業に就職すべきか否か」の決め手を欠く一因とも言えるでしょう。このような状況下だからこそ、多くの学生は少しでも情報を得ようとネットで企業のことを調べますが、そこには玉石混交の企業情報やクチコミがあふれているばかり。結局、どの情報を信じていいのかわからなくなっていることも内定辞退率を高めている一因と考えられます。

しかし、環境の変化を嘆いているだけでは何も解決しません。置かれた状況下でできることを改善していくのが、課題を克服する方法です。繰り返しになりますが、内定辞退が起こるのは、動機づけの不足が原因なのです。つまり、採用担当者はこれをどのようにリカバーしていくかを考えなくてはならない、ということです。

動機づけができていないのは、学生に寄り添い、その迷いがどこから生まれているのかをきちんと把握できていないからではないでしょうか。採用担当者は、「迷うのもよくわかるよ」と理解を示しながら、学生に合わせて必要な情報を十分に提供してあげましょう。そうすることで結果的に、自社ではなく他社を勧めることになるかもしれません。しかし、そのくらい親身に向き合う姿勢がなければ、人生の岐路に立ち決断しようとしている学生の心を動かすことはできないのではないでしょうか。

「伝わらない」現実が内定者のグリップを弱める

――内定辞退が起こるのは動機づけの不足が原因ということですが、具体的にどのような点が不足しているのでしょうか。

要因1:会社のことが伝わりきっていない

オンラインは非言語情報(情熱や思い)が伝わりにくいというネックがあります。では、伝わっているはずの言語情報がきちんと届いているかというと、実はそうとも言えません。これは対面でも同じことです。

人と話していると「前にも言ったじゃないか」という場面に出くわすことがありますよね。これは人には、関心があることだけに焦点を当て、そうでなければ右から左に流してしまうという特性があるからです。誰かに何かを伝える際には、基本的に一度では伝わらないと思っておくといいかもしれません。私は、理解レベルが下記の4段階になっていると考えます。

段階1 情報を○✕で評価できる
段階2 情報をそのまま復唱できる
段階3 情報について、自分の過去の体験と紐付けて話せる
段階4 情報をもとに、未来の軸で話せる

上記を踏まえた上で、伝えたことは、後で必ず確認してみましょう。たとえば、「あなたは、当社をどんな会社だと思いますか?」と学生に問いかけてみるのです。その返答によって、どれだけ相手に伝わっているのかを確かめることができるはずです。いない学生は、「この会社は自分を本当に理解してくれているのか」と不安になります。この不安が生まれる理由は、選考のフィードバック不足です。「あなたがこういう人だと認識しているし、社長もこう評価している。だから、他の人ではなく、あなたを採用しました」と、きちんと伝えてあげなくてはいけません。採用理由に説得力を持たせるには、選考でどれだけ掘り下げて評価できたかにもかかっています。もし、フィードバックするための情報に不足を感じるのであれば、面接での掘り下げが足りなかったということです。問題がどこにあったのか、課題は何なのかをしっかり見極めて、次回に生かしましょう。

要因3:決断が苦手で、決めきれない

学生のなかには、いつまでも迷っているタイプもいます。しかし、決断できないというのは、学生にとっても企業にとってもよいことではありません。このような場合は、期限を設けてあげましょう。ただし、それは要因1、2をクリアしている場合に限ります。あくまでも動機づけがうまくいっていないのは、採用する側に問題があるからだと考えるべきです。そうでなければ、単なる「オワハラ (※就活終われハラスメントの略。企業が学生に内定を出すから他の会社は断ってと要求すること)」と受け取られてしまいかねません。

内定辞退を防ぐ“内定者フォロー”とは

――内定辞退を防ぐため、多くの企業が内定者フォローに力を入れています。改めてどのようなものなのか教えてください。

内定者フォローとは、内定辞退者を出さないために、企業側が内定を出した学生に対して、就職に関する不安や疑問を解消したり、フォローしたりする施策のことです。

そもそも採用活動とは、学生のあるべき姿を知り、自社に入社することで得られる便益を相手に伝える活動です。応募の段階から選考プロセスを通じて、その活動ができていれば問題ありません。しかし、オンライン採用が通常化している昨今では、非言語情報が伝わりにくいこともあって、学生が持っている企業についての情報量が不足しがちです。そのため、不安や迷いが生じる学生が多く、別途フォローをする必要性が高まっているのが現状です。

学生の要望で多いのは、「直接会社を見たい」「社員に会いたい」という、リアルなコミュニケーションです。これを叶えられないことが、就職を決めきれない大きな原因になっていると感じています。コロナ禍という状況ではありますが、直接対面できるなら、各社感染対策を実施して、できる限り学生の要望を受け入れてほしいと思います。もし、どうしても難しい場合は、たとえオンラインであったとしても実施してください。いずれにしても、「学生からの希望や要望を聞きます」という真摯な姿勢を示すことが、メッセージとして重要だと考えます。

ただ、勘違いしてはいけないのが、内定者フォローをすべての学生が望んでいるわけではないということです。やみくもに社員との面談を設定しても、学生にとっては迷惑に感じる場合もあります。大事なのは、学生が何を求めているかを知ることです。「学生の意思決定を手助けする」というスタンスを持ち続けるように心がけましょう。

関連記事:内定辞退を防ぐための内定者フォローの重要性!代表的5つの事例をご紹介

内定者フォローにおける4つのポイント

――内定者フォローを実施する際のポイントを教えてください。

具体的には4つのポイントが挙げられます。

ポイント1:これまでのプロセスで知り得た情報をバックトラッキングする

どれだけ学生のことを理解しているのかを伝える活動です。

ポイント2:自社とのマッチングポイントを伝える(一般的なものでなく個別に)

採用理由をしっかり伝える活動です。

ポイント1と2に関しては、内定者フォローのときだけでなく、選考プロセスにおいても取り組むようにしてください。選考時にバックトラッキングやマッチングポイントの説明が不足していた場合、それを補うという意味合いがあります。

ポイント3:同じように悩んで入社を決めた先輩社員を引き合わせる

たとえば、他社と迷っている学生がいたら、学生時代に同じように悩んだ先輩社員と引き会わせるのもいいでしょう。「自分も悩んだよ」と体験談を語ってもらうのは、非常に有効です。また、他業界と悩んでいる学生には、その業界で働いたことのある中途採用の社員との面談も効果的でしょう。このとき押さえておきたいのは、この面談が選考とは関係のない非公式な場であって、クロージングしてはいけないということです。あくまでも、情報収集と情報提供に徹するようにしましょう。

ポイント4:クロージングの時期と担当者を決める

内定者フォローの最終段階です。これまでの公式、非公式のやりとりを振り返り、クロージングを図ってください。誰がクロージングするかも重要です。トップの発言は圧倒的に説得力があるため、中小企業であれば、社長が担当するといいでしょう。そして、クロージングで伝えるのは、次の2つです。

(1)企業が採用したい理由
これまでの選考を振り返り、どうしてその学生を選んだのか、熱意を持って伝えてください。その理由が具体的であればあるほど、学生は納得感を得られるでしょう。
(2)学生が入社したい理由
学生の発言をもとに、一緒に志望動機を整理します。もし、学生が悩んでいるとしたら、それを共有し、「こういう理由で自社を選ぶべき」と説明してあげることが大切です。採用する側は、何人もの学生を見ていますから、企業を選ぶ際の要点は十分把握しているはずです。しかし、学生はいわば“就活の素人”。そのため、決断の際の基準や切り口(ヒント)を知りません。採用担当者には、その切り口になるものを親身に提案してほしいと思います。

このように内定者フォローは、学生がどんなことで悩んでいるのかを把握していないと実行することができません。それには、選考プロセスの合間で、「正直なところどうなの?」と本音を聞けるような関係性をつくっておく必要があるため、学生に対しての窓口となる主担当は立てるべきだと考えます。

そして、主担当に選ばれた人物は、積極的に学生と接点を持つようにしましょう。特に内定者フォローの段階に入ったら、学生の都合にもよりますが、最低でも週に1回は、定期定時にコンタクトを取ってください。話題としては、「納得して入社してもらいたいから」「本当によい選択をしてほしいから」「他社の選考状況を知りたいから」などがよいでしょう。定期的な会話が習慣化すると、学生は徐々に本音を話してくれるようになるはずです。

このように接点を持ち続けるのは、一見負担が増えるように感じるかもしれません。しかし、学生が抱えている悩みを知れば、選考プロセスの中に潜んでいる課題も見えてきます。たとえば、「Aが理由で不安になっているなら、Bの情報も伝えよう」「Cの質問をしたことで決断を迷わせてしまったから、Dの聞き方に変えてみよう」など、学生がボトルネックに感じているものを解消するのに役立つケースもあるのです。

多くの場合、主担当を務めるのは、採用担当者であるみなさんです。みなさんが、いかに「学生の声」に丁寧に耳を傾けられるかが、採用を成功させる鍵になります。自身以外に原因があると考えているうちは、何も解決しません。目の前にいる学生と情熱を持って真摯に向き合い、自身ができることに、ぜひ全力で取り組んでほしいと思います。

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この記事の著者

酒井 利昌
株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ
採用コンサルタント
https://attax-sales.jp/

『いい人財が集まる会社の採用の思考法』著者。学習塾業界、人材サービス業界を経て、現職。営業コンサルタントとして現場指導に従事するとともに、採用コンサルタントとして活動。採用がうまくいかないことが成長のボトルネックとなっている企業が支援対象。 独自の営業・マーケティングノウハウを転用した採用力強化メソッドは、15ヶ月間、採用できなかった中小企業を2ヶ月間で成功に導くなど実績多数。「人の力を源泉に成長したい」全国の企業からのオファーが絶えず、無料で採用相談を受けることをライフワークにしている。